労災奮闘記(6)原告主張(時間外労働)

「1か月に80時間以上の時間外労働を行った」の該当性

原告はタイムカードを基本的に押していたためタイムカードを基準とすることには争いはない。

しかしながらタイムカードは原告が制服に着替えてから部署に入る直前に押されるのであり、過去の最高裁判例(三菱重工長崎造船所事件 最高裁平成12年3月9日第一小法廷判決)に則り着替えの時間として5分を加算すべきである。また制服への更衣の必要性は就業規則に定めてある。

被告は原告の当直業務について病院が労働基準監督署の宿日直許可を得ていることをもって、実労働時間のみを労働時間として算定しているがこれは誤りである。

第一にこの宿日直許可についてであるが、これには付款が付されており、『17:00以前に勤務に付かせてはならない』『翌8:30以降に勤務に付かせてはならない』という条件の元で許可されたものである。しかし原告の労働は実際には日勤からそのまま宿直をして、さらに半日勤務をしていおり、29時間の連続した労働であった。このためこの宿日直許可は法的効力を得ず、宿日直の拘束時間全てを労働時間として算定すべきである。

第二に宿日直の実態が宿日直と呼べるものではないという点である。原告の宿日直の労働密度は24.5%~51.7%であり、ほとんど労働することがない実態とは言えない。また当直時間すべてが労働時間と認められた奈良病院事件判決(奈良地裁判決平成21年4月22日)や長崎病院機構事件(長崎地裁判決令和元年5月27日)と比較しても同等かそれ以上の業務量であり宿日直の拘束時間全てを労働時間として算定すべきである。

また休憩時間は45分であったが、検査実施記録から休憩が取れていないと判断できる日は短縮した時間を立証できる範囲で労働時間に加えるべきであるが被告はこれを無視している。

これらを加味すると病院にいた時間だけでも時間外労働は73時間50分~101時間28分である。

さらに原告には月2~3回の待機勤務が課せられていた。待機勤務では30分以内の現場到着が求められており飲酒も禁止であった。待機人数は1名で、評価期間中17回の待機で12回呼ばれており、雇用契約確認書にも待機勤務ありと記載されていることから明確に病院の指示であり指揮命令下にあったと言える。

これらを加味すると時間外労働は85時間47分~146時間20分となる。

被告の主張する時間外労働が29~56時間という時間外労働は不当な評価であると言える。

仮に待機勤務を含めないとしても80時間以上の時間外労働を行っていることから
この項目単体での評価は【中】となるべきであり、100時間を超えていることから他に【中】の項目がある時点で総合評価【強】とすべきである。

コメント

タイトルとURLをコピーしました