労災奮闘記(2)被告主張

争いのない事実について

傷病名は統合失調症。
発病は平成27年7月中旬。
個人的要因ではない。

つまり出来事の評価のみが争点となっている事案です。
まずは国側の意見を2回に分けて見ていきたいと思います。

労働基準監督署が審査請求時に出した意見書
(名古屋東労働基準監督署長 近藤氏)
(厚生労働省事務官 調査官 田中由紀子氏)

 請求人は、平成27年1月頃から同年7月頃の間、業務上のミスについて上司から業務指導を受けたと主張している。
 
 確かに、請求人は他の医療機関からの依頼検査について別人の検査画像を保存したCDを作成し依頼のあった医療機関に提供したことや、依頼伝票の確認を誤り、医師の指示通りの検査が実施されていないことがあり上司から注意を受けている。

 また平成27年4月頃上司より、医学物理士の資格取得に関して具体的な計画を提示するように求められたが、その達成は強く求められていない。上司からCTC読影技術向上のための問題集を提供され、患者の被ばく量に関するデータを解析する作業も依頼されたが、同種の経験を有する労働者であれば行える程度のものだった。

 この出来事を職場における心理負荷評価表にあてはめると、「類型:⑥対人関係」「出来事:31 上司とのトラブルがあった」に該当し、平均的な心理負荷の強度は「Ⅱ」である。ミスの重大性を考えると、請求人が受けた注意は業務指導の範囲をいつ出していたとは認められない。これらのことを総合的に判断し、出来事の心理的負荷の強度は「弱」であると判断した。

 請求人は、平成27年1月5日から同月17日まで、13日間連続勤務を行ったと主張している。この出来事を職場における心理的負荷表に当てはめると「類型:③仕事の量・質」「出来事:17 2週間以上にわたって連続勤務を行った」に該当し、平均的な心理負荷の強度は「Ⅱ」である。

 連続勤務についてはシフト上土曜日の半日勤務や日曜日の当直勤務に従事しているもので、平日だけではこなせない業務量や休日に対応しなければならない業務が発生したものではない。これらのことを総合的に判断し、出来事の心理的負荷の強度は「弱」であると判断した。

 またこれらの2つの出来事の前後に恒常的な長時間労働は認められない。

 関連しない複数の出来事が認められ、出来事の評価がいずれも「弱」であることから全体評価は「弱」と判断する。

 処分庁は、平成27年6月12日から同年5月14日で51時間47分と前月(4月14日から5月13日の29時間05分)よりも22時間42分増加していたことが認められたが(発病時期が平成27年7月中旬のため、7月11日から20日まで10通り計算した結果、同年7月12日を起点とする6か月間において、上述の仕事量の変化が認められた。)5月13日から4月14日の間にはゴールデンウィークが含まれているために所定労働日が少ないことから見かけ上増加しているものであり、他の期間の時間外労働数と同等の時間数であることから、仕事内容、仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があったとは認められず、発病に関与した出来事として評価しない。

 請求人は、平成27年1月19日から同年3月31日までの間、非常勤職員が休職したため、「複数名で担当した業務を一人で担当するようになった」と申し立てているが、非常勤職員が担当していたCT装置での撮影は他の労働者によって行われており、非常勤職員の業務をすべて請求人が一人で行う状況ではなかったことから、発病に関与した出来事として評価しない。

 請求人は平成27年3月16日から同月20日、放射線漏洩線量測定に関して、「業務に関連し、違法行為を強要された」と申し立てているが、これは請求人自身の出来事ではないため、発病に関与した出来事として評価しない。

 関連しない複数の出来事が認められ出来事の評価がいずれも「弱」であることから、全体評価は「弱」と判断する。

 以上のとおり業務による心理的負荷の総合評価は「弱」であり、精神障害の発病と業務との間に相当因果関係は認められない。

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