ADMINISTRATIVE CASE / 13th HEARING
原告準備書面⑺
PLAINTIFF'S PREPARATORY BRIEF No.7 / MARCH 4, 2026
準備書面⑺
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令和6年(行ウ)第13号 療養補償給付不支給処分取消請求事件
令和6年(行ウ)第40号 休業補償給付不支給処分取消請求事件
原 告 原告X
被 告 国(処分行政庁 名古屋東労働基準監督署長)
準備書面(7)
(被告第6準備書面への反論と補充)
令和8年3月4日
名古屋地方裁判所民事第1部合ホ E 係 御中
原告訴訟代理人弁護士 岩 井 羊 一
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第1 本書面の趣旨 本準備書面では、令和8年1月15日付の被告第6準備書面に対し必要な範囲で 反論する。また原告準備書面(1)について補充をする。なお、略語等は、本準備書面 で新たに用いるもののほかは、従前の例による。 第2 発病の業務起因性について 1 院内暴力事案への対応に関する被告の主張に理由がないこと 被告は、不穏患者が複数名に対して暴力行為に及んでいた事実を原告が認識し たのは、事後的に看護記録を確認してからであるとして、当該不穏患者が複数名に 暴行を加えていたことは、本件暴力事案における心理的負荷の強度には影響しない と主張する。 しかしながら、このような被告の主張は、本件事案における心理的負荷の評価構造 を誤解するものである。 確かに、原告は、当該不穏患者が原告と対峙する以前に他の部署等において複 数名に暴力行為を加えていた事実については、当時詳細には認識していなかった。 しかし、原告は、実際に当該不穏患者が事務職員を殴打し、看護されている場面を 目撃しており、さらに当該患者から「ここへ来い、殴ってやる」などの明確な加害意思 を示す発言を受けている。 加えて、本件不穏患者が複数名に対して暴力行為に及んでいたことは看護記録に 明確に記載されており、これらの事実は、当該患者が偶発的に暴力を振るったのでは なく、高度の易暴力性を有していたことを客観的に裏付ける事情である。 このような人物と約 1 時間にわたり対峙し、業務対応を余儀なくされた原告の心理 的負荷は、当該患者が他者に対して既に暴力行為に及んでいたという事情を含めて 評価すべきものであり、その心理的負荷は相当に大きかったというべきである。
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なお、原告は、被告が主張するように、当該不穏患者が複数名に暴行を加えてい た事実それ自体を、直接的に心理的負荷として主張しているものではない。原告が問 題としているのは、当該患者の易暴力性が具体的な言動や行動によって現実化した 状況下で、長時間にわたり業務上の対応を強いられたという点である。 また、被告は、当該不穏患者が主として女性看護師を暴行の対象としていたことか ら、男性職員である原告が暴行を受ける可能性は低かった旨主張する。しかし、看護 記録等に照らせば、当該不穏患者は警備員に対しても暴力行為を行っており、病院 に女性警備員が存在しないことを踏まえれば、当該患者の暴力行為が性別によって 限定されていたとは到底いえない。 以上のとおり、当該不穏患者による暴力の危険性は、性別によって左右されるもの ではなく、原告が暴行を受ける具体的危険性は現実的かつ切迫したものであったとい うべきである。したがって、被告の主張はいずれも本件事案の実態を踏まえないもの であり、理由がない。 2 原告が施設基準を満たしていない状態でCT業務を継続させられ、これが 「業務に関連し、不法な行為を強要された」に該当するとの原告の主張に理由 があること 被告は別件訴訟において病院が明確に放射線漏れを否定しており、争っていること を根拠に放射線漏洩の事実を認めることが困難であると主張している。 甲136号証と甲137号証は別件訴訟において病院が提出した乙7号証および乙8 号証であるが、別件訴訟において病院は、甲第136号証(平成 21 年 5 月 7 日測定) および甲第137号証(令和 7 年 7 月 17 日測定)に基づき、「CT室におけるX線漏洩 は認められない」と主張する。しかし、これらの測定方法は積算線量(μSv)を指標とす る方式であり、低線量の漏洩を検出するには不適切であるため、病院主張は前提を欠
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く。
甲第136・137号証における測定条件は、いずれも 「1.5 秒スキャンを 10 回」 行
い、積算線量を読み取る方法である(甲第136号証 2 頁、甲第137号証 2 頁)。甲第
137号証の測定仕様によれば、積算線量計の最小指示値は 0.1 μSv 未満であり、
バックグラウンド値も同程度である(甲第137号証 3 頁「バックグラウンド値 0.1 μSv 未
満」)。
しかしながら、原告は線量率計測(μSv/h)によって 8 μSv/h の漏洩線量を確認し
ており、その測定動画も証拠提出済みである(甲7)。8 μSv/h の環境下において、
病院が用いたのと同じ方法(1.5 秒スキャン×10 回=合計 15 秒照射)で積算線量を
算出すると、
8 μSv/h × (15 秒 ÷ 3600 秒) = 0.033 μSv
となる。
この値は、甲第136・137号証の積算線量計の最小指示値(0.1 μSv)を大きく下回
るため、病院の測定方法ではたとえ原告測定と同程度の漏洩が存在しても、計測上は
常に「0.0 μSv」と表示されることになる。
したがって、甲第136・137号証は「低線量漏洩を検出する能力(測定レンジ)を有
していない」測定結果に過ぎず、これをもって 「漏洩が存在しない」 と結論づけること
は科学的にも実務的にも誤りである。
むしろ、原告側の線量率測定(μSv/h)は低線量漏洩の検出に適した方式であり、
JIS 規格に基づく測定方法として合理性が高い。
また甲138に示す行政通達の 43 頁において以下のような記述がある。
「ウ 測定に際しては線量率測定で行うことを可能とするが、管理区域境界に係る線量
限度等が3月間当たりで規定されていることにかんがみ、1週間又は1月間等の一定
期間における積算線量による測定が望ましいこと。」
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これによると積算線量で漏洩線量測定を行う場合は1週間又は1か月間の測定が必 要であり、病院の依頼した専門業者が行った 1.5 秒曝射を 10 回行うという方法は不 適切であることは明らかである。 以上より、病院の主張する「漏洩なし」との結論は、測定方法自体の限界に基づくも のであって、本件CT室のX線漏洩の不存在を基礎づける根拠にはならない。 よって別件訴訟の病院の主張には理由がなく、それを引用して主張する被告の主張 にも理由がない。 また被告は、原告がこれまで「不適正な保険請求を強要された」と明示的に主張し ていなかったことをもって、そのような事実は存在しなかったと論じる。しかし、このよう な主張は、原告の主張内容及びその展開経過を正確に理解しないものであり、失当 である。 原告は当初より一貫して、病院において放射線漏洩が存在し、その是正がなされな いまま、長期間にわたり CT 専従業務に従事させられていたこと、これにより被ばくの 危険性に対する強い不安を抱いていたことを主張してきた。 不適正な保険請求の問題は、こうした業務環境の下で行われていた業務内容の一 側面を構成するものであり、これまでの主張と矛盾する新たな事実を追加するもので はない。 さらに、本件における原告の主張は、事実関係自体を変更又は追加するものでは なく、争点整理の進行に応じて、当該事実が有する法的・心理的意味を段階的に具 体化してきたにすぎない。 すなわち、原告は当初、放射線漏洩が是正されない環境下で業務に従事させられ ていたという事実関係に即して、被ばくの危険性に対する不安という心理状態を主張 してきた。 その後、訴訟の進行に伴い、当該不安が業務上どのような心理的負荷を形成して
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いたかが争点として明確化される中で、被告は、「測定方法は不適切である」「仮に漏
れていたとしても被ばく量自体は軽微」などと主張した。
これに対し原告は、問題の本質は単なる主観的不安の有無にあるのではなく、放射
線漏洩の存在を認識しながら是正措置を講じない職場環境の下で、診療報酬請求を
前提とする業務に従事せざるを得なかったという点にあり、これは職業倫理及び安全
配慮の双方に反する業務を事実上強いられていたことにほかならないとして、その評
価を明確化したものである。
したがって、原告の主張は、新たな事実を付加するものではなく、従前から主張して
きた事実関係を前提として、その法的評価を精緻化したものにすぎず、被告が指摘す
るような「後出しの主張」には当たらない。
そもそも、不適正な保険請求の「強要」とは、原告が個別に抗議したにもかかわらず
明示的に命令された場合に限られるものではない。医療機関において、診療報酬請
求を前提とする業務が組織的に行われている以上、当該業務に従事すること自体が
事実上の義務として課されており、これを拒否することは、職務放棄や懲戒等の不利
益を招きかねない。
このような状況下で、原告が、放射線漏洩の存在を認識しながら、病院における放
射線漏洩について、「病院関係者Aに鉛ガラス窓を改修してほしい旨を相談した際に
はこれを拒絶された。」ことに照らせば、当該業務に従事し続けざるを得なかったこと
は、職業倫理と安全配慮の双方に反する業務を事実上強いられていたものと評価す
べきであり、被告のいう「強い心理的負荷となるような不法な行為を強要された事実は
なかった」との指摘は、強要概念を過度に形式化したものである。
よって被告の主張には理由がない。
以上