ADMINISTRATIVE CASE / 2nd HEARING
被告 第1準備書面
DEFENDANT'S PREPARATORY BRIEF No.1 / MAY 2, 2024
第1準備書面
令和6年5月2日 被告提出
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令和6年(行ウ)第13号 療養補償給付不支給処分取消請求事件 原告 原告X 被告 国(処分行政庁名古屋東労働基準監督署長) 第1準備書面 名古屋地方裁判所民事第1部合ホE係御中 令和6年5月2日 被告指定代理人 11名
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第1 訴状における請求の原因に対する認否 第2 事案の概要及び本件訴訟に至る経緯 1 事案の概要 2 本件訴訟に至る経緯 第3 業務起因性の法的判断の枠組み 1 はじめに 2 業務起因性の意義と立証責任 3 精神障害についての業務上外の判断 (1) 条件関係(「ストレス ― 脆弱性」理論との関係等) (2) 相当因果関係について 第4 心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の認定基準 1 心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針の策定 2 平成23年認定基準の策定 3 平成23年専門検討会における検討 (1) 検討に当たっての基本的考え方 (2) 検討結果骨子 4 平成23年認定基準(乙第5号証)の要旨等 (1)判断指針と平成23年認定基準の主な相違点 (2)平成23年認定基準の要旨 5 令和2年5月認定基準及び本件認定基準について (1)認定基準の一部改正の経緯 (2) 令和 2年報告書(乙第6号証)の骨子 (3) 令和 2年5月認定基準の要旨 (4) 本件認定基準 6 令和5年認定基準 (1) 認定基準の改正の経緯及び趣旨
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(2)令和5年報告書(乙第8号証)の骨子 (3)令和5年認定基準(甲第67号証)の要旨 7 小括 第5 業務起因性の判断の前提となる事実関係等 1 本件病院の概要 2 原告の経歴、業務内容等 3 原告の労働条件 (1)所定労働時間 (2)休憩時間 (3)所定休日 (4)時間外及び休日勤務 4 労働時間 (1)労働時間の管理方法 (2)原告の休憩時間 (3)待機業務 (4)当直 (5)日曜日の当直 (6)朝準備 (7)時間外労働時間の管理方法 (8)発病前おおむね6か月間の時間外労働時間 5 人事評価 (1)平成26年冬期賞与考課表(乙第1号証394ページ) (2)平成27年夏期賞与考課表(乙第1号証396ページ) 6 本件疾病について (1)受診医療機関の各医師の意見 (2)愛知労働局地方労災医員の意見書
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第6 本件処分が適法であること 1 はじめに 2 原告の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷があったとは認められないこと (1) はじめに (2) 「特別な出来事」は存在しないこと (3) 「特別な出来事」以外の出来事とその評価 3 業務による心理的負荷の全体評価について 第7 結語
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被告は、本準備書面において、訴状における請求の原因に対する認否をするとともに(後記第1)、事案の概要及び本件訴訟に至る経緯(後記第2)、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)における精神障害の業務起因性に関する法的判断の枠組み(後記第3)及び心理的負荷による精神障害の業務上外の判断基準(後記第4)について述べた上で、業務起因性の判断の前提となる事実関係等を明らかにし(後記第5)、名古屋東労働基準監督署長(以下「監督署長」という。)が、令和3年4月7日付けで原告に対して行った療養補償給付を支給しない旨の決定(以下「本件処分」という。)が適法であることを主張する(後記第6)。 第1 訴状における請求の原因に対する認否 1 「第1 当事者」について (1) 「1 原告」(2ページ)について 認める。 (2) 「2 原告の経歴」(2及び3ページ)について 第1ないし第4及び第9段落については認めるが、その余は不知又は争う。 2 「第2 原告の療養補償給付請求と被告の不支給決定処分」について (1) 「1 療養補償給付の請求」(3ページ)について 認める。 (2) 「2 原処分」(3ページ)について 認める。 (3) 「3 審査請求」(3ページ)について 認める。 (4) 「4 審査請求の棄却」(3ページ)について 認める。 (5) 「5 再審査請求」(3及び4ページ)について 認める。
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(6) 「6 原処分の違法性」(4ページ)について 争う。 3 「第3 認定基準」(4ページ)について (1) 第1段落は認める。 (2) 第2段落について 原告が、本件処分を受けたときは、平成23年12月26日付け基発1226第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(乙第5号証。以下「平成23年認定基準」という。)の改正である令和2年8月21日付け基発0821第4号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(乙第7号証。以下「本件認定基準」といい、本件認定基準の別表1「業務による心理的負荷評価表」を「本件認定基準別表1」という。)に基づき判断されていたこと、令和5年9月1日付け基発0901第2号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(甲第67号証。以下「令和5年認定基準」という。)において、平成23年認定基準が廃止されたことは認めるが、その余は争う。 本件処分は令和5年認定基準発出前になされたものであり、その適法性については、本件処分において依拠された本件認定基準に照らして判断するべきである。 (3) 第3段落は認める。 (4) 第4段落は認否の限りではない。 4 「第4 原告の発病」(4ページ)について 認める。 5 「第5 原告の精神障害発病の業務起因性」について (1) 「1 原告の業務内容」(5ページ)について 病院にはメインの64列CTとサブの16列CTがあることは認めるが、その余は不知。
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(2) 「2 『上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた』に該当すること」(5及び6ページ)について 不知ないし争う。 (3) 「3 『達成困難なノルマが課せられた・対応した・達成できなかった』に該当すること」(6及び7ページ)について 不知ないし争う。 (4) 「4 『1か月に80時間以上の時間外労働を行った』に該当すること」について ア 「(1) 原告の時間外労働」(7ページ)について (ア) 第1段落について 争う。 (イ) 第2段落(「また原告は」から始まる段落)について 不知。 (ウ) 第3段落(「待機時間を」から始まる段落)について 争う。 イ 「(2) 時間外労働の考え方について」 (ア) 「ア 当直時間」(7及び8ページ)について a 第1段落について 争う。 b 第2段落(「原告の」から始まる段落)について 不知。 c 第3段落(「病院は」から始まる段落)について 第1文は認め、その余は不知ないし争う。 d 第4段落(「甲25号証」から始まる段落)について 不知ないし争う。 (イ) 「イ 待機勤務」(8ページ)について
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不知ないし争う。 (ウ) 「ウ まとめ」(8ページ)について 争う。 (5) 「5 『2週間以上にわたって連続勤務を行った』に該当すること」について ア 「(1) 連続勤務」(8及び9ページ)について 認める。 イ 「(2) 原処分庁、審査官の判断」(9ページ)について 第1及び第2段落(「また、」から始まる段落)は認め、その余は争う。 (6) 「6 『仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった』に該当すること」(9及び10ページ)について 第1及び第2文(「原告は」から始まる文)は不知、その余は争う。ただし、後記第6の2(3)オで述べるとおり、統合失調症(以下「本件疾病」という。)発病前の6か月目から本件疾病発病前の5か月目の時間外労働時間数の増加は、「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」に該当し、その心理的負荷の強度は「中」であることは認める。 (7) 「7 『複数名で担当していた業務を1人で担当するようになった』に該当すること」(10ページ)について 不知ないし争う。 (8) 「8 『顧客や取引先から対応が困難な注文や要求等を受けた』に該当すること」について ア 「(1)」(10ページ)について 不知。 イ 「(2)」(10ページ)について 不知。 ウ 「(3)」(10及び11ページ)について
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不知。 エ 「(4)」(11ページ)について 争う。 (9) 「9 『感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した』に該当すること」について ア 「(1)」(11ページ)について 不知。 イ 「(2)」(11ページ)について 不知。 ウ 「(3)」(11ページ)について 争う。 (10) 「10 『業務に関連し、違法な行為や不適切な行為等を強要された』に該当すること」(11及び12ページ)について 不知ないし争う。 (11) 「11 『業務に関連し、重大な人身事故、重大事故を起こした』に該当すること」(12及び13ページ)について 不知ないし争う。 (12) 「12 小括」(13ページ)について 争う。 6 「第6 結語」(13ページ)について 争う。 第2 事案の概要及び本件訴訟に至る経緯 1 事案の概要 本件は、原告が、統合失調症(本件疾病)を発病し、その後寛解したとして、監督署長に対し、労災保険法による療養補償給付の請求を行ったところ、監督
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署長が、令和3年4月7日、上記給付を支給しない旨の処分(本件処分)を行ったことから、原告が本件処分の取消しを求めている事案である。 2 本件訴訟に至る経緯 (1) 原告は、平成24年4月1日、名古屋市天白区平針4-305所在の社会医療法人名古屋記念財団名古屋記念病院(以下「病院」という。)に入職、放射線部に配属されて、CT撮影等の業務に従事していた(乙第1号証297、300及び387ページ)。 (2) 原告は、平成28年4月1日、〇〇クリニックを受診したところ「統合失調症」と診断された(乙第1号証615ないし617ページ)。 (3) 原告は、本件疾病を発病した原因は業務上の事由によるものであるとして、監督署長に対し、療養補償給付の請求を行ったところ(甲第1号証、乙第1号証157及び158ページ)、監督署長は、令和3年4月7日、本件処分をした(甲第2号証、乙第1号証160及び161ページ)。 (4) 原告は、本件処分を不服として、令和3年4月14日、本件審査官に対し、審査請求をしたが(乙第1号証675ページ)、本件審査官は、令和5年3月31日、原告の審査請求を棄却する旨の決定をした(甲第65号証、乙第1号証677ないし750ページ)。 (5) 原告は、上記(4)の審査請求の棄却決定を不服として、同年4月17日、労働保険審査会に対し、再審査請求をしたが(甲第66号証、乙第1号証1ページ)、労働保険審査会は、令和6年4月5日、原告の再審査請求を棄却する旨の決定をした(乙第9号証)。 (6) 原告は、令和6年1月30日付け訴状により、本件訴訟を提起した。 第3 業務起因性の法的判断の枠組み 1 はじめに 本件精神障害に係る業務起因性の有無を検討する前に、精神障害事案に対す
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る労災認定に係る被告の基本的スタンスを明らかにするために、本項において、 労災保険給付における業務起因性の法的判断枠組みについて、また、後記第4 において、心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の認定基準について、 各々詳述する。 2 業務起因性の意義と立証責任 (1) 労災保険法上の保険給付は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった 場合に支給される(労災保険法7条1項1号)。 また、労災保険法上、業務災害に関する保険給付は、労働基準法(以下「労 基法」という。)75条ないし77条、79条及び80条に規定する災害補 償の事由が生じた場合に行うものとされ(労災保険法12条の8第2項)、 労基法75条1項は、「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合に おいては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用 を負担しなければならない。」と規定し、同条2項は、「前項に規定する業務 上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。」と規定し、これを受 けて労働基準法施行規則(以下「労基則」という。)35条、別表第1の2 が業務上の疾病の範囲を具体的に定めている。 本件において、原告の精神障害の発病が業務上のものと認められるために は、当該精神障害が労災保険法7条1項1号、労基法75条ないし77条、 79条及び80条の定める「業務上」の疾病に該当する必要がある(以下「業 務起因性」という。)。 (2) 上記のとおり、労災保険法7条1項1号により保険給付を行うべき事由は、 労基法による災害補償を行うべき事由と一致するところ、労基法による災害 補償制度は、使用者の過失の有無を問わず、「業務上」の傷病による労働者 の損失を使用者が負担することを義務付けているのみならず(労基法75条 ないし77条、79条、80条)、刑罰をもって使用者に対しその履行を強 制している(労基法119条1号)。
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(3) このような労基法による災害補償制度は、労働者が、従属的労働契約に基 づいて使用者の支配監督下にあることから、労務の提供をする過程において、 業務に内在する危険が現実化して傷病が引き起こされた場合には、使用者は、 その傷病の発病について過失がなくても、その危険を負担し、労働者の損失 の填補に当たるべきであるとする危険責任の考え方に基づくものである。 かかる考え方は、労災補償制度にも当てはまるところ、当該発病を使用者 の無過失責任に帰せしめるためには、業務外の危険が現実化して疾病が発病 したと認められる場合を除外すべきであるから、当該労働者の疾病等を業務 上のものであること、すなわち業務起因性を肯定するには、当該労働者が当 該業務に従事しなければ当該結果が発病しなかったという条件関係が認めら れるだけでは足りず、当該業務と当該疾病等の間に法的にみて労災補償を認 めるのを相当とする関係、すなわち相当因果関係が存在することを要する。 これは確立した判例の立場である(公務起因性について、最高裁昭和51年 11月12日第二小法廷判決・判例時報837号34ページ、最高裁平成6 年5月16日第二小法廷判決・労働判例651号13ページ、最高裁平成8 年1月23日第三小法廷判決・判例時報1557号58ページ、業務起因性 について、最高裁平成9年4月25日第三小法廷判決・判例時報1608号 148ページ)。 そして、使用者の労災補償責任の性質が危険責任を根拠とするところから すれば、業務と疾病等の間の相当因果関係の有無は、当該疾病が業務に内在 する危険の現実化として発病したと認められるかどうかによって判断される ものというべきである(前掲最高裁平成8年1月23日第三小法廷判決、最 高裁平成8年3月5日第三小法廷判決・判例時報1564号137ページ)。 (4) 業務と災害との間に相当因果関係があることについての主張・立証責任に ついては、相当因果関係があることが保険給付の要件であることから、保険 給付に係る不支給決定を争う原告にあると解するのが相当である(東京高裁
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平成2年8月8日判決・労働判例569号51ページ及びその上告審である 最高裁平成3年3月5日第三小法廷判決・労働判例583号6ページ)。 3 精神障害についての業務上外の判断 精神障害の場合においても、その発病が業務上のものと認められるためには、 精神障害の発病と業務との間に、条件関係及び相当因果関係が肯定されること が必要である。 (1) 条件関係(「ストレス-脆弱性」理論との関係等) ア 精神障害の原因は、古くから内因、外因及び心因に分けられており、業 務起因性の判断に当たっては、当該精神障害が内因性か、外因性か、ある いは心因性かを検討し、内因性精神障害については、労災補償上業務上と なることはあり得ないとされてきたが、20世紀後半に入り、脳科学の進 歩と精神障害の心理学的・社会学的研究の発展により、また一面、時代の 変遷による精神障害そのものの多様化、変貌もあり、従来のような内因、 外因、心因の3分類では精神障害を分類できなくなったとして、精神障害 を「ストレス-脆弱性」理論で理解することが、多くの人に受け入れられ るようになった(乙第2号証19ページ)。 「ストレス-脆弱性」理論とは、環境由来のストレスと個体側の反応性 ・脆弱性との関係で精神破綻が生じるという考え方であり、ストレスが非 常に強ければ、個体側の脆弱性が小さくても精神障害が起こるし、逆に、 個体側の脆弱性が大きければ、ストレスが小さくても破綻が生じると帰結 される(乙第2号証19ページ)。 したがって、精神医学的にみて、あるストレスが精神障害を発病させる 可能性を有する程度に強いものであれば、当該精神障害は主として当該ス トレスが主因となって発病したものと理解され、当該ストレスがそれほど までに強いものではないと評価できるものであれば、当該精神障害は個 体側の脆弱性が主因となって発病したもの、と理解されることとなる。
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これを条件関係に当てはめると、ストレスと精神障害との条件関係につ いては、個体側の脆弱性の程度に応じ、ストレスがなければ精神障害が発 病していなかったかによって判断することが妥当と考えられる。 イ もっとも、労災保険法における業務起因性の認定において問題となる条 件関係は、ストレスの中でも業務上のストレスと精神障害との条件関係、 すなわち、「業務上のストレスがなければ精神障害が発病していなかった」 という関係であるところ、人間は業務に従事するか否かを問わず日常生活 によるストレスを必ず受けるものであるから、単に、「業務上のストレス がなければ精神障害が発病していなかった」との関係をもって条件関係を 認めるのは誤りであり、条件関係が認められるためには、当該「業務上の ストレス」が、一定以上の大きさを伴う客観的に意味のあるものでなけれ ばならないはずである。 したがって、業務と精神障害との間の条件関係を肯定するためには、業 務上一定以上の大きさを伴う客観的に意味のあるストレスが精神障害の発 病に寄与しており(少なくとも一原因となっており)、当該ストレスがな ければ精神障害は発病していなかったとの関係が高度の蓋然性をもって認 められる場合でなければならないというべきである。 (2) 相当因果関係について ア はじめに 相当因果関係は、業務と労働災害という結果との間に条件関係が認めら れるとしても、さらに、危険責任として無過失責任を認めるのにふさわし い法的関係があるか否か、使用者により拠出された財源から保険金を給付 することが正当化されるか否かという観点から、労災保険給付を行う範囲 に一定の限定を加える機能を持つ要件である。 精神障害の場合、その発病には複数の原因が競合しており、その複数の 原因が結果発生に対して絡み合っているのが通常であり、結果発生への影
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響も強弱様々であるが、労災補償制度は、業務上の事由と業務外の事由と いう複数の原因が競合していても、業務上の事由が寄与した割合に応じて 労災補償給付をすることを予定せず、業務上であるか否かを画一的に判断 する制度であるため、このように複数の原因が競合している場合において、 業務と発病との間にどの程度のつながりがあれば、条件関係のみならず相 当因果関係があるといえるのかという問題が顕在化する。 この点については、前記2(3)のとおり、業務と精神障害の間における 相当因果関係の有無は、精神障害が当該業務に内在する危険の現実化とし て発病したと認められるかどうかによって判断されるものであるから、ま ず、①当該業務が危険であること(危険性の要件)が必要であり、さらに、 ②当該精神障害が当該業務に内在する危険の現実化として発病したと認め られること(現実化の要件)が必要というべきである。 イ 危険性の要件 危険性の要件とは、業務が精神障害との関係において危険な業務である と認められるためには、どのような業務でなければならないかということ であり、業務によるストレスがどの程度のものであれば、使用者の危険責 任を認めるにふさわしい業務の危険性を肯定できるかという問題である。 この点につき、業務の危険性は当該労働者を基準に判断すべきであると し、通常の労働者にとって日常的なささいなストレスといえるレベルの業 務上のストレスであっても、個体側の脆弱性が大きい労働者にとって、精 神障害を発病させるおそれのあるストレスを伴う業務は、危険な業務であ るとする見解(本人基準説)がある。 しかしながら、当該業務が危険であるかどうかは、当該業務の内容や性 質に基づいて客観的に判断されるべき事柄であり、本人の脆弱性は、判断 の対象である「業務」に内包されない業務外の要因であるから、本人の脆 弱性の程度によって業務の危険性が左右されるのは不合理である。また、
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本人基準説によれば、日常的なささいなストレスを伴う業務であっても、 脆弱性の大きい当該労働者にとっては危険であったということになりかね ないが、労災補償制度の前提となる使用者の補償責任が危険責任に基づく 無過失責任であり、また、労災補償制度が使用者の保険料の拠出により運 営されていることに照らせば、脆弱性の大きな労働者に発生した精神障害 まで労災補償制度で救済することは、制度の趣旨に反するというべきであ る。 しかも、日常生活の全ての場面においてストレスは多かれ少なかれ常に 存在しているのであり、また、ストレスの受け止め方は個々人によって異 なるものであるから、当該特定人が受け止めたストレスの大きさを当該特 定人を基準として判断すれば、精神障害を発病した当該特定人にとっては、 そのストレスは大きいことにならざるを得ず、これでは、ストレスの大き さの問題と当該特定人の個体側の反応性・脆弱性の問題とを区別すること はできない。 また、前記の「ストレス-脆弱性」理論においては、ストレスの大きさ を客観的に観察し、それほどでもないストレスに対して過大に反応したと すれば、それは当該特定人の個体側の脆弱性の問題として理解することと されており、本人基準説はこれに反している。 加えて、ストレスにも様々なものがあるため、業務起因性の判断の観点 からは、ストレスを業務上のものと業務外のものとに分けることが必要で あるところ、発病の原因として業務上のストレスと業務外のストレスのい ずれが精神的な負荷として大きかったかということや、個体側の脆弱性と いったことを外面から判断することは困難を伴うことによれば、業務外の ストレスの有無・程度及び個体側の脆弱性が外面からは確認できない場合 であっても、業務によるストレスが客観的に精神障害を発病させるほどの 強さでない場合には、当該精神障害の発病は、業務外のストレス又は当該
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労働者の脆弱性に主な原因があったと解するのが相当である。 以上のことからすれば、業務が精神障害との関係で危険であるかどうか は、飽くまで平均的な労働者、すなわち、日常業務を支障なく遂行できる 労働者を基準とするとの見解(平均人基準説)をとるべきである。この点 については判例も同旨と解される(脳・心臓疾患の公務上外の認定に関す る前掲最高裁平成8年1月23日第三小法廷判決・判例時報1557号5 8ページ、名古屋高裁平成10年3月31日判決・判例時報1660号1 31ページ、その上告審である最高裁平成12年4月21日第二小法廷判 決・判例時報1564号137ページ。精神障害の業務起因性の認定につ いては、東京高裁平成19年10月11日判決・労働判例959号114 ページ)。 したがって、平均人を基準として、業務によるストレスが客観的に精神 障害を発病させるに足りる程度のものであるといえる場合に、初めて危険 性の要件を肯定し得るものというべきである。 ウ 現実化の要件 次に、相当因果関係を認めるためには、当該業務が危険性を有している だけでは足りず、当該業務に内在する危険の「現実化」として当該精神障害が 発病したことが認められる必要がある。つまり、仮に、当該労働者が、た またま危険な業務に従事していたとしても、当該精神障害が業務に内在す る危険の現実化として発病したといえないものであれば、相当因果関係は 認められないのである。なぜなら、仮に、業務が危険性を有するものであっ ても、その危険が現実化して発病したと認められない以上、当該発病を使 用者の無過失責任に帰することはできないからである。 このような観点からすると、仮に、精神障害の発病に業務が何らかの寄 与をしていることが認められる場合であっても、業務外の要因がより有力 な原因となって精神障害の発病をもたらした場合には、当該精神障害は、
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業務に内在する危険が現実化して発病したものではなく、業務外に存在し た危険(当該労働者の私的領域に属する危険)が現実化して発病したもの であるから、相当因果関係は認められないというべきである。 したがって、当該精神障害の発病が、業務に内在する危険の「現実化」 といえるためには、当該発病に対して、業務による危険性が、その他の業 務外の要因に比して相対的に有力な原因になったと認められることが必要 というべきである。 エ 小括 したがって、精神障害の発病と業務との相当因果関係が認められるため には、① 当該業務による負荷が、平均的な労働者、すなわち、日常業務 を支障なく遂行できる労働者にとって、業務によるストレスが客観的に精 神障害を発病させるに足りる程度の負荷であると認められること(危険性 の要件)、② 当該業務による負荷が、その他の業務外の要因に比して相対 的に有力な原因となって、当該精神障害を発病させたと認められること(現 実化の要件)が必要であると解すべきである。 第4 心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の認定基準 1 心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針の策定 厚生労働省(中央省庁等改革基本法の実施に伴う厚生労働省設置法施行以前 においては労働省をいう。以下同じ。)は、平成9年12月に「精神障害等の 労災認定に係る専門検討会」(以下「平成11年専門検討会」という。)を設置 し、精神医学、心理学、法律学の研究者9名に対し、精神障害等の労災認定に ついて専門的見地からの検討を依頼した。専門検討会は、平成10年2月から 平成11年7月までの間、延べ16回の全体会議及び5回の分科会を開催して 検討を行い、「精神障害等の労災認定に係る専門検討会報告書」(乙第2号証。 以下「平成11年報告書」という。)を取りまとめた。厚生労働省労働基準局
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長は、この平成11年報告書を踏まえ、平成11年9月14日、「心理的負荷 による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」(乙第3号証。以下「判 断指針」という。)を通達の形で示した。 平成11年専門検討会の平成11年報告書は、多様な精神障害に関する個々 具体的に異なる労災請求事案について、斉一的かつ迅速・適正な処理を実現す るとの観点から、業務と精神障害発病との一般的関連について検討し、実際の 事案の処理に当たって具体的に求められる業務起因性の判断について、最新の 医学的知見を基にその考え方を取りまとめたものであって、専門検討会の結論 としての「検討結果」と、その結論に至った考えの背景についてまとめた「検 討概要」から成っていた。判断指針は、前記第3で示したような業務起因性に 関する法的判断の枠組みを前提とした上で、平成11年専門検討会の平成11 年報告書を踏まえ、業務起因性に関する判断基準を示したものであった。 判断指針策定以降、労働環境の急激な変化等により、新たに心理的負荷が生 ずる事案が認識され、判断指針の心理的負荷評価表による具体的出来事への当 てはめが困難な事案が少なからず見受けられるようになってきたことから、厚 生労働省においてストレス出来事の評価に関する委託研究が実施された。厚生 労働省では、その研究結果を踏まえて「職場における心理的負荷評価表の見直 し等に関する検討会」を開催し、職場における心理的負荷評価表の見直し等に ついて検証・検討を行い、その結果を平成21年3月27日付け「職場におけ る心理的負荷評価表の見直し等に関する検討会報告書」(以下「平成21年報 告書」という。)として取りまとめた。 厚生労働省労働基準局長は、平成21年報告書を踏まえ、平成21年4月6 日付け基発第0406001号「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外 の判断指針の一部改正について」により判断指針の一部改正を行った。 2 平成23年認定基準の策定 業務による心理的負荷を原因とする精神障害については、判断指針に基づい
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て労災認定が行われていたところ、平成22年5月、業務と疾病との間に因果 関係があることが明らかな疾病として、労基則別表第1の2に掲げる列挙疾病 に追加された。 また、精神障害事案に係る労災請求件数は大幅に増加し、厚生労働省の自殺 ・うつ病等への対策(平成22年5月プロジェクトチーム報告書)において精 神障害事案に対する労災手続の迅速化に言及されるなど、労災請求に対する審 査の迅速化が不可欠となった。 そこで、厚生労働省労働基準局労災補償部長は、法学及び医学の専門家を招 集し、平成22年10月15日から10回にわたり、精神障害の労災認定の基 準に関する専門検討会(以下「平成23年専門検討会」という。)を開催し、 さらにセクシュアルハラスメント事案については、その性質からより深く実態 を把握した上で検討を行う必要があると考え、セクシュアルハラスメント事案 に係る分科会を開催した。 平成23年専門検討会は、平成23年11月8日付けで「精神障害の労災認 定の基準に関する専門検討会報告書」(乙第4号証。以下「平成23年報告書」 という。)を取りまとめた。 厚生労働省労働基準局長は、平成23年報告書の内容を踏まえ、平成23年 12月26日、平成23年認定基準(乙第5号証)を通達の形で示した。 この通達は、発出日である平成23年12月26日から施行され、本通達の 施行に伴い、判断指針は廃止された。 3 平成23年専門検討会における検討 (1) 検討に当たっての基本的考え方 平成23年専門検討会では、審査の迅速化や、そのための調査の効率化に 加え、認定の促進が重要な課題であって積極的に推進すべきであるとの基本 的認識の下、医学的知見、これまでの認定事例、裁判例の状況等も踏まえ、 精神障害の成因、精神障害の業務上外の判断枠組み、出来事ごとの心理的負
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荷の強度の見直し、心理的負荷の評価対象等についても検討を行った(乙第 4号証1及び2ページ)。 (2) 検討結果骨子 平成23年専門検討会では上記の考え方に基づき検討を行い、認定要件に 関する検討結果を次のように取りまとめている。 ア 対象となる精神障害 平成11年報告書(乙第2号証)が、対象疾病に関して、原則として、 国際疾病分類第10回改訂版第V章に示される「精神および行動の障害」 を対象とするとしている趣旨は、精神障害の分類方法等について世界保健 機関(WHO)が定めた基準を用いることを明示したものであり、精神障 害事案を斉一的に取り扱うため、今後もこれを維持することが適当である (乙第4号証2及び3ページ)。 イ 成因に関する考え方(ストレス-脆弱性理論に基づく評価) 精神障害の成因(発病に至る原因の考え方)として、判断指針及び平成 11年報告書が依拠している「ストレス-脆弱性理論」は、平成11年以 後の精神医学上の知見を考慮しても最も有力な考え方といえ、また、裁判 例においても是認されている。したがって、平成23年専門検討会におい ても、精神障害の成因としては、「ストレス-脆弱性理論」に依拠するこ とが適当と考える(乙第4号証3ページ)。 ウ 業務起因性の考え方 (ア) 業務起因性の基本 精神障害に関する労災請求事案については、発病の原因が業務にある ことが主張されるが、業務による出来事の心理的負荷が一般には強いと 推定される事案であっても、同時期に業務以外の強い心理的負荷が生じ ている場合や、個体側要因が顕著に現れている場合があり得る。 このため、精神障害の業務起因性を判断するに当たっては、業務によ
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る心理的負荷の有無、程度を判断し、業務以外の心理的負荷や個体側要 因についても確認した上で、業務による強い心理的負荷が認められ業務 以外の強い心理的負荷や個体側要因が認められない場合には業務起因性 を肯定し、業務による強い心理的負荷が認められない場合や、明らかに 業務以外の心理的負荷や個体側要因によって発病したと認められる場合 には、業務起因性を否定するという従来からの考え方を維持することが 適当である。 また、出来事によって受ける心理的負荷の強さの程度は、個人ごとに 差があるが、労災保険制度が補償の対象とする業務上疾病が、業務に内 在し、又は通常随伴する危険の現実化と評価される疾病であることから、 「業務による強い心理的負荷」が客観的に認められることが必要であり、 それは、一般の労働者にとっても強い心理的負荷を与えると評価される 出来事(その前後の状況を含む。)に遭遇したという事実によって判断 される。 ただし、労働者の職種や経験等は様々であることから、労働者に与え る心理的負荷の程度を一律に定めることは適当ではないため、労働者の 属性に基づく修正をすることによって公平性を保つ必要がある。した がって、精神障害を発病した労働者と職種、職責、年齢、経験等が類似 する者を想定し、そのような者にとってどの程度の心理的負荷であるか を判断する方法が合理的であり、結局、「同種の労働者」が一般的にど う受け止めるかにより判断するこれまでの考え方を維持することが適当 である(乙第4号証3及び4ページ)。 (イ) 業務起因性の評価の範囲 平成23年専門検討会でも、評価期間について検証が必要と考え、ラ イフイベント調査の状況等を確認したが、面接により詳細な内容の調査 を行う場合、6か月を超えると個人の記憶の精度が大きく低下するため
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調査期間を6か月以内としているものが多いことや、出来事の発生時期 と発病との関係を示す新たな知見が見当たらない現状では、原則として 発病前おおむね6か月以内の出来事を評価するという取扱いを維持する のが適当であると考える(乙第4号証4及び5ページ)。 (ウ) 既に発病している疾病の悪化の業務起因性 既に精神障害を発病している労働者本人の要因が業務起因性の判断に 影響することが非常に少ない極めて強い心理的負荷があるケース、具体 的には「特別な出来事」に該当する出来事があり、その後おおむね6か 月以内に精神障害が自然経過を超えて著しく悪化したと医学的に認めら れる場合については、その心理的負荷が悪化の原因であると推認して、 業務起因性を認めるのが適当であるとの結論に至った(乙第4号証5及 び6ページ)。 エ 新評価表の出来事等の見直し 平成23年専門検討会は、厚生労働省が平成22年度に行った「ストレ ス評価に関する調査研究」について検討した結果、同調査は調査規模が大 きく対象業種等も広範であるだけでなく、職場における心理的負荷評価表 に掲げられた具体的出来事の心理的負荷の大きさを網羅的に調査した唯一 の研究であり、かつ、ストレス研究の専門家等によって選定された職場で 実際に見られる新たなストレッサーについても調査した優れた研究である と評価し、その結果に基づき、判断指針の別表第1「職場における心理的 負荷評価表」に示す出来事の平均的な心理的負荷の強度を見直した(乙第 4号証6及び7ページ)。 4 平成23年認定基準(乙第5号証)の要旨等 (1) 判断指針と平成23年認定基準の主な相違点 平成23年認定基準における、対象疾病、認定要件、認定要件に関する基 本的な考え方は、判断指針のそれを実質的に変更するものではない。
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なお、業務による心理的負荷の評価方法を明確にするため、新たに別表1 「業務による心理的負荷評価表」(以下「平成23年認定基準別表1」とい う。)が定められたが、従前の判断指針の別表1「職場における心理的負荷 評価表」からの主な変更点は、以下のとおりである。 ア 「出来事」と「出来事後の状況」を一括評価することとし、表に具体例 を示した。 イ 「出来事の類型」の見直しを行った。 ウ 「具体的出来事」の見直しを行った。特に、新たに「1か月に80時間 以上の時間外労働を行った」を置いた。判断指針においては長時間労働そ れ自体は心理的負荷の生じる「出来事」として評価されなかったが、他に 特段の出来事が存在しない場合を想定して、長時間労働それ自体を「出来 事」とみなし、項目を設けたものである。また「2週間以上にわたって、 連続勤務を行った」、「非正規職員である自分の契約満了が迫った」を新設 した。項目の統合も行われた。 エ 「平均的な心理的負荷の強度の見直し」として、判断指針別表の「同僚 とのトラブルがあった」について、「Ⅰ」から「Ⅱ」に引き上げた。 また、出来事の評価に当たり、出来事が繰り返されるものについて、開 始時からすべての行為を評価の対象としたなど、取扱いを変更した。 (2) 平成23年認定基準の要旨 厚生労働省労働基準局長は、平成23年12月26日付けで平成23年認 定基準を示したが、これは、平成23年報告書を踏まえ、精神障害の業務起 因性に関する判断基準を通達の形で示したものである。以下にその要旨を述 べる。 ア 対象疾病(乙第5号証2ページ) 平成23年認定基準で対象とする疾病は、国際疾病分類第10回修正版 (以下「ICD-10」という。)第V章「精神および行動の障害」に分
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類される精神障害であって、器質性のもの及び有害物質に起因するものを 除く。 対象疾病のうち業務に関連して発病する可能性のある精神障害は、主と してICD-10のF2からF4に分類される精神障害である。いわゆる 心身症は、認定基準における精神障害には含まれない。 イ 認定要件(乙第5号証2ページ) 次の(ア)、(イ)及び(ウ)のいずれの要件も満たす対象疾病は、労基則別表 第1の2第9号に該当する業務上の疾病として取り扱う。 (ア) 対象疾病を発病していること(以下「認定要件1」という。)。 (イ) 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷 が認められること(以下「認定要件2」という。)。 (ウ) 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは 認められないこと(以下「認定要件3」という。)。 また、要件を満たす対象疾病に併発した疾病については、対象疾病に 付随する疾病として認められるか否かを個別に判断し、これが認められ る場合には当該対象疾病と一体のものとして、労基則別表第1の2第9 号に該当する業務上の疾病として取り扱う。 ウ 認定要件に関する基本的な考え方(乙第5号証2及び3ページ) 対象疾病の発病に至る原因の考え方は、「ストレス-脆弱性理論」、すな わち、環境由来の心理的負荷(ストレス)と、個体側の反応性、脆弱性と の関係で精神的破綻が生じるかどうかが決まり、心理的負荷が非常に強け れば、個体側の脆弱性が小さくても精神的破綻が起こり、脆弱性が大きけ れば、心理的負荷が小さくても破綻が生ずるとする理論に依拠している。 このため、心理的負荷による精神障害の業務起因性を判断する要件とし ては、対象疾病の発病の有無、発病の時期及び疾患名について明確な医学 的判断があることに加え、当該対象疾病の発病の前おおむね6か月の間に
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業務による強い心理的負荷が認められることを掲げている。 この場合の強い心理的負荷とは、精神障害を発病した労働者がその出来 事及び出来事後の状況が持続する程度を主観的にどう受け止めたかではな く、同種の労働者が一般的にどう受け止めるかという観点から評価される ものであり、「同種の労働者」とは職種、職場における立場や職責、年齢、 経験等が類似する者をいう。 さらに、これらの要件が認められた場合であっても、明らかに業務以外 の心理的負荷や個体側要因によって発病したと認められる場合には、業務 起因性が否定される。以上のことから、認定要件を前記イのとおり定めた。 エ 認定要件の具体的判断 (ア) 発病の有無等の判断(乙第5号証3ページ) 対象疾病の発病の有無(認定要件1)、発病時期及び疾患名は「IC D-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン」(以 下「診断ガイドライン」という。)に基づき、主治医の意見書や診療録 等の関係資料、労災保険法に定める保険給付の請求者や関係者からの聴 取内容、その他の情報から得られた認定事実により、医学的に判断され る。 なお、強い心理的負荷と認められる出来事の前と後の両方に発病の兆 候と理解し得る言動があるものの、どの段階で診断基準を満たしたのか の特定が困難な場合には、出来事の後に発病したものと取り扱う。 精神障害の治療歴のない事案については、主治医意見や診療録等が得 られず発病の有無の判断も困難となるが、この場合にはうつ病エピソー ドのように症状に周囲が気付きにくい精神障害もあることに留意しつつ 関係者からの聴取内容等を医学的に慎重に検討し、診断ガイドラインに 示されている診断基準を満たす事実が認められる場合又は種々の状況か ら診断基準を満たすと医学的に推定される場合には、当該疾患名の精神
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障害が発病したものとして取り扱う。 (イ) 業務による心理的負荷の強度の判断(乙第5号証3ないし7ページ) 前記イの認定要件のうち、(イ)の「対象疾病の発病前おおむね6か月 の間に、業務による強い心理的負荷が認められること」(認定要件2) とは、対象疾病の発病前おおむね6か月の間に業務による出来事があり、 当該出来事及びその後の状況による心理的負荷が、客観的に対象疾病を 発病させるおそれのある強い心理的負荷であると認められることをい う。 業務による心理的負荷の強度の判断に当たっては、精神障害発病前お おむね6か月の間に、対象疾病の発病に関与したと考えられる業務によ るどのような出来事があり、また、その後の状況がどのようなものであっ たのかを具体的に把握し、それらによる心理的負荷の強度はどの程度で あるかについて、平成23年認定基準別表1を指標として「強」、「中」、 「弱」の三段階に区分する。 平成23年認定基準別表1においては、業務による強い心理的負荷が 認められるものを心理的負荷の総合評価が「強」と表記し、業務による 強い心理的負荷が認められないものを「中」又は「弱」と表記している。 「弱」は日常的に経験するものであって一般的に弱い心理的負荷しか認 められないもの、「中」は経験の頻度は様々であって「弱」より心理的 負荷があるが強い心理的負荷とは認められないものをいう。 具体的には次のとおり判断し、総合評価が「強」と判断される場合に は、前記イの認定要件のうち(イ)を満たすものとする。 a 「特別な出来事」に該当する出来事がある場合 発病前おおむね6か月の間に、平成23年認定基準別表1の「特別 な出来事」に該当する出来事がある場合には、心理的負荷の総合評価を 「強」と判断する。
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b 「特別な出来事」に該当する出来事がない場合 (a) 具体的出来事への当てはめ 発病前おおむね6か月の間に認められた業務による出来事が、平 成23年認定基準別表1の「具体的出来事」のどれに該当するかを 判断する。ただし、実際の出来事が平成23年認定基準別表1の「具 体的出来事」に合致しない場合には、どの「具体的出来事」に近い かを類推して評価する。 (b) 出来事ごとの心理的負荷の総合評価 該当する「具体的出来事」に示された具体例の内容に、認定した 「出来事」や「出来事後の状況」についての事実関係が合致する場 合には、その強度で評価する。事実関係が具体例の内容に合致しな い場合には、「具体的出来事」ごとに示している「心理的負荷の総 合評価の視点」及び「総合評価における共通事項」に基づき、具体 例も参考としつつ個々の事案ごとに評価する。 c 出来事が複数ある場合の全体評価 対象疾病の発病に関与する業務による出来事が複数ある場合の心理 的負荷の程度は、次のように全体的に評価する。まず、いずれかの出 来事が「強」の評価となる場合は、業務による心理的負荷を「強」と 判断する。いずれの出来事でも単独では「強」の評価とならない場合、 それらの複数の出来事について、関連して生じているのか、関連なく 生じているのかを判断した上で、①出来事が関連して生じている場合 には、その全体を一つの出来事として評価することとし、原則として 最初の出来事を「具体的出来事」として認定基準別表1に当てはめ、 関連して生じた各出来事は出来事後の状況とみなす方法によりその全 体評価を行う。②一つの出来事のほかに、それとは関連しない他の出 来事が生じている場合には、主としてそれらの出来事の数、各出来事
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の内容(心理的負荷の強弱)、各出来事の時間的な近接の程度を基に、 その全体的な心理的負荷を評価する。 d 時間外労働時間数の評価(乙第5号証5及び6ページ) 長時間労働が認められる場合には、次のとおり平成23年認定基準 別表1に定められた時間外労働時間数(週40時間を超える労働時間 数をいう。以下同じ。)を指標とする基準に沿って判断する。 なお、業務による強い心理的負荷は、長時間労働だけでなく、仕事 の失敗、役割・地位の変化や対人関係等、様々な出来事及びその後の 状況によっても生じることから、この時間外労働時間数の基準に至ら ない場合にも、時間数のみにとらわれることなく、上記aからcによ り心理的負荷の強度を適切に判断する。 (a) 極度の長時間労働による評価 極度の長時間労働は、心身の極度の疲弊、消耗を来し、うつ病等 の原因となることから、発病日から起算した直前の1か月間におお むね160時間を超える時間外労働を行った場合等には、当該極度 の長時間労働に従事したことのみで心理的負荷の総合評価を「強」 とする。 (b) 長時間労働の「出来事」としての評価 長時間労働以外に特段の出来事が存在しない場合には、長時間労 働それ自体を「出来事」とし、新たに設けた「1か月に80時間以 上の時間外労働を行った(項目16)」という「具体的出来事」に 当てはめて心理的負荷を評価する。 項目16の平均的な心理的負荷の強度は「Ⅱ」であるが、発病日 から起算した直前の2か月間に1月当たりおおむね120時間以上 の時間外労働時間を行い、その業務内容が通常その程度の労働時間 を要するものであった場合には、心理的負荷の総合評価を「強」と
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する。項目16では、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じ させる出来事があった(項目15)」と異なり、労働時間数がそれ 以前と比べて増加していることは必要な条件ではない。 なお、他の出来事がある場合には、時間外労働の状況は下記(c) による総合評価において評価されることから、原則として項目16 では評価しない。ただし、項目16で「強」と判断できる場合には、 他の出来事が存在しても、この項目でも評価し、全体評価を「強」 とする。 (c) 恒常的長時間労働が認められる場合の総合評価 出来事に対処するために生じた長時間労働は、心身の疲労を増加 させ、ストレス対応能力を低下させる要因となることや、長時間労 働が続く中で発生した出来事の心理的負荷はより強くなることか ら、出来事自体の心理的負荷と恒常的な長時間労働(月100時間 程度となる時間外労働)を関連させて総合評価を行う。 具体的には、「中」程度と判断される出来事の後に恒常的な長時 間労働が認められる場合等には、心理的負荷の総合評価を「強」と する。 なお、出来事の前の恒常的な長時間労働の評価期間は、発病前お おむね6か月の間とする。 e 出来事の評価の留意事項(乙第5号証7ページ) 業務による心理的負荷の評価に当たっては次の点に留意する。 (a) 業務上の傷病により6か月を超えて療養中の者が、その傷病に よって生じた強い苦痛や社会復帰が困難な状況を原因として対象疾 病を発病したと判断される場合には、当該苦痛等の原因となった傷 病が生じた時期は発病の6か月よりも前であったとしても、発病前 おおむね6か月の間に生じた苦痛等が、ときに強い心理的負荷とな
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ることに鑑み、特に当該苦痛等を出来事(「(重度の)病気やケガをした(項目1)」)とみなす。 (b) いじめやセクシュアルハラスメントのように、出来事が繰り返されるものについては、発病の6か月よりも前にそれが開始されている場合でも、発病前6か月以内の期間にも継続しているときは、開始時からの全ての行為を評価の対象とする。 (c) 生死にかかわる業務上のケガをした、強姦に遭った等の特に強い心理的負荷となる出来事を体験した者は、その直後に無感覚等の心的まひや解離等の心理的反応が生じる場合がある。その場合には、当該解離性の反応が生じた時期が発病時期となるため、当該発病時期の前おおむね6か月の間の出来事を評価する。 (d) 本人が主張する出来事の発生時期が発病の6か月より前である場合であっても、発病前おおむね6か月の間における業務内容の変化や新たな業務指示等が認められるときは、これを出来事として評価する。 (ウ) 業務以外の心理的負荷及び個体側要因の判断(乙第5号証7及び8ページ) 前記イの認定要件のうち、(ウ)「業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと」(認定要件3)とは、①業務以外の心理的負荷及び個体側要因が認められない場合、②業務以外の心理的負荷又は個体側要因は認められるものの、業務以外の心理的負荷又は個体側要因によって発病したことが医学的に明らかであると判断できない場合、のいずれかをいう。 a 業務以外の心理的負荷の判断 (a) 業務以外の心理的負荷の強度については、対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、対象疾病の発病に関与したと考えられる業務以
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外の出来事の有無を確認し、出来事が一つ以上確認できた場合は、それらの出来事の心理的負荷の強度について、認定基準の別表2「業務以外の心理的負荷評価表」(以下「認定基準別表2」という。)を指標として、心理的負荷の強度を「Ⅲ」、「Ⅱ」又は「Ⅰ」に区分する。 (b) 出来事が確認できなかった場合には、上記①に該当するものと取り扱う。 (c) 強度が「Ⅱ」又は「Ⅰ」の出来事しか認められない場合は、原則として上記②に該当するものと取り扱う。 (d) 「Ⅲ」に該当する業務以外の出来事のうち心理的負荷が特に強いものがある場合や、「Ⅲ」に該当する業務以外の出来事が複数ある場合等については、それらの内容等を詳細に調査の上、それが発病の原因であると判断することの医学的な妥当性を慎重に検討して、上記②に該当するか否かを判断する。 b 個体側要因の評価 本人の個体側要因については、その有無とその内容について確認し、個体側要因の存在が確認できた場合には、それが発病の原因であると判断することの医学的な妥当性を慎重に検討して、上記②に該当するか否かを判断する。 オ 精神障害の悪化の業務起因性(乙第5号証8ページ) 業務以外の原因や業務による弱い(「強」と評価できない)心理的負荷により発病して治療が必要な状態にある精神障害が悪化した場合、悪化の前に強い心理的負荷となる業務による出来事が認められることをもって直ちにそれが当該悪化の原因であるとまで判断することはできず、原則としてその悪化について業務起因性は認められない。 ただし、平成23年認定基準別表1の「特別な出来事」に該当する出来
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事があり、その後おおむね6か月以内に対象疾病が自然経過を超えて著しく悪化したと医学的に認められる場合には、その「特別な出来事」による心理的負荷が悪化の原因であると推認し、悪化した部分について、労基則別表第1の2第9号に該当する業務上の疾病として取り扱う。 カ 専門家意見と認定要件の判断(乙第5号証8及び9ページ) (ア) 主治医意見による判断 すべての事案(対象疾病の治療歴がない自殺に係る事案を除く。)について、主治医から、疾患名、発病時期、主治医の考える発病原因及びそれらの判断の根拠についての意見を求める。 その結果、労働基準監督署長が認定した事実と主治医の診断の前提となっている事実が対象疾病の発病時期やその原因に関して矛盾なく合致し、その事実を平成23年認定基準別表1に当てはめた場合に「強」に該当することが明らかで、下記(イ)及び(ウ)に該当しない場合には、認定基準を満たすものと判断する。 (イ) 専門医意見による判断 次の事案については、主治医の意見に加え、地方労災医員等の専門医に対して意見を求め、その意見に基づき認定要件を満たすか否かを判断する。 a 主治医が発病時期やその原因を特定できない又はその根拠等があいまいな事案等、主治医の医学的判断の補足が必要な事案 b 疾患名が、ICD-10のF3(気分(感情)障害)及びF4(神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害)以外に該当する事案 c 労働基準監督署長が認定した事実関係を平成23年認定基準別表1に当てはめた場合に、「強」に該当しない(「中」又は「弱」である)ことが明らかな事案
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d 労働基準監督署長が認定した事実関係を平成23年認定基準別表1に当てはめた場合に、明確に「強」に該当するが、業務以外の心理的負荷又は個体側要因が認められる事案(下記(ウ)cに該当する事案を除く。) (ウ) 地方労災医員協議会精神障害等専門部会意見による判断 次の事案については、主治医の意見に加え、地方労災医員協議会精神障害等専門部会に協議して合議による意見を求め、その意見に基づき認定要件を満たすか否かを判断する。 a 自殺に係る事案 b 労働基準監督署長が認定した事実関係を平成23年認定基準別表1に当てはめた場合に、「強」に該当するかどうかも含め判断しがたい事案 c 労働基準監督署長が認定した事実関係を平成23年認定基準別表1に当てはめた場合に、明確に「強」に該当するが、顕著な業務以外の心理的負荷又は個体側要因が認められる事案 d その他、専門医又は労働基準監督署長が、発病の有無、疾病名、発病時期、心理的負荷の強度の判断について高度な医学的検討が必要と判断した事案 キ 療養及び治ゆ(乙第5号証9及び10ページ) 心理的負荷による精神障害は、その原因を取り除き、適切な療養を行えば全治し、再度の就労が可能となる場合が多いが、就労が可能な状態でなくとも治ゆ(症状固定)の状態にある場合もある。 ク 自殺について(乙第5号証10ページ) 業務によりICD-10のF0からF4に分類される精神障害を発病したと認められる者が自殺を図った場合には、精神障害によって正常の認識、行為選択能力が著しく阻害され、あるいは自殺行為を思いとどまる精神的
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抑制力が著しく阻害されている状態に陥ったものと推定し、業務起因性を認める。 5 令和2年5月認定基準及び本件認定基準について (1) 認定基準の一部改正の経緯 業務による心理的負荷を原因とする精神障害については、平成23年認定基準に基づいて労災認定が行われてきたところであるが、平成23年認定基準の発出以降、働き方の多様化が進み、労働者を取り巻く職場環境が変化するなど社会情勢の変化も生じているところである。 このような中、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」という。)が改正され、令和2年6月からパワーハラスメント防止対策が法制化されること等を踏まえ、厚生労働省は、精神医学、法律学及び公衆衛生学の専門家による認定基準専門検討会(以下「令和2年専門検討会」という。)を令和元年12月17日から5回にわたり開催し、平成23年認定基準別表1の見直しについての検討が行われた。 令和2年専門検討会は、それまでの議論を踏まえて、令和2年5月15日に「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書」(乙第6号証。以下「令和2年報告書」という。)を取りまとめた。 この令和2年報告書の内容を踏まえ、厚生労働省労働基準局長は、令和2年5月29日付け基発0529第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準の改正について」を通達の形で示した(改正された認定基準(以下「令和2年5月認定基準」という。)は、改正労働施策総合推進法が令和2年6月1日から施行されることに伴い、令和2年6月1日以降適用されることとされた。 (2) 令和2年報告書(乙第6号証)の骨子 令和2年報告書は、労働施策総合推進法の改正により、令和2年6月から
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パワーハラスメント防止対策が法制化されること等を踏まえ、平成23年認定基準別表1の見直しについて検討を行ったものであり、その検討結果に基づき、①検討会開催の背景等、②検討の視点(パワーハラスメント防止対策の法制化等を踏まえた検討等)、③平成23年認定基準別表1に係る「パワーハラスメント」の具体的出来事等への追加、④平成23年認定基準別表1に係る具体的出来事等の修正、⑤業務起因性の評価の範囲等の各事項を記載しているところである。 これらは、いずれも改正された令和2年5月認定基準の内容として採用されている。 (3) 令和2年5月認定基準の要旨 改正された令和2年5月認定基準は、新たな医学的知見等に基づきパワーハラスメントに係る出来事を新しく評価対象としたものではなく、パワーハラスメント防止対策の法制化等に伴い職場における「パワーハラスメント」の用語の定義が法律上規定されたことを踏まえ、同出来事を認定基準別表1に明記するとともに、これに伴って整理を要すると考えられる平成23年認定基準別表1の項目について必要な改正が行われたものである(以下、令和2年5月認定基準の別表1「業務による心理的負荷評価表」を「令和2年5月認定基準別表1」という。)。 なお、令和2年5月認定基準の主な改正点は、以下のとおりである。 ア 令和2年5月認定基準別表1のうち、「出来事の類型」について、⑤として「パワーハラスメント」を追加し、その具体的出来事として、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた(項目29)」を追加した。 イ 令和2年5月認定基準別表1のうち、具体的出来事「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた(項目29)」については、上記アの改正に伴い、パワーハラスメントに該当しない優位性のない同僚間の暴行や嫌
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がらせ、いじめ等を評価する項目として位置付けるとともに、名称を「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた(項目30)」に修正した。 ウ 上記ア及びイの項目の平均的な心理的負荷の強度を、過去の支給決定事例等を踏まえ、「Ⅲ」とした上で、心理的負荷の総合評価の視点、心理的負荷の強度を「弱」、「中」、「強」と判断する具体例についても、過去の支給決定事例等を踏まえ修正した。 (4) 本件認定基準 令和2年5月認定基準は、令和2年9月1日から雇用保険法の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)等が施行され、複数業務要因災害に係る労災保険制度が同日から施行されることに伴い、令和2年8月21日、令和2年8月21日付け基発0821第4号により改正され、同年9月1日から施行された(乙第7号証)。同改正は、複数業務要因災害による精神障害に関して、従来の認定基準について読み替えに関する記述を追加した上で、2以上の事業の業務による心理的負荷の強度の判断を追記したものである。 6 令和5年認定基準 (1) 認定基準の改正の経緯及び趣旨 心理的負荷による精神障害については、平成23年認定基準(その改正である令和2年5月認定基準、本件認定基準を含む。)に基づき労災認定を行ってきたところであるが、平成23年認定基準の発出以降、働き方の多様化が進み、労働者を取り巻く職場環境が変貌するといった社会情勢の変化が生じており、また、精神障害の労災保険給付請求件数も年々増加しているところである。こうした社会情勢の変化と労働者の心身の健康に対する関心の高まりを鑑み、厚生労働省は、認定要件や業務による心理的負荷評価表の内容をはじめとする認定基準の全般についての検討を行うため、令和3年12月7日から14回にわたり、精神医学、法律学及び公衆衛生学の専門家による認
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定基準専門検討会(以下「令和5年専門検討会」という。)を開催した。令和5年専門検討会においては、平成23年認定基準について、最新の専門的知見を踏まえた多角的検討が行われ、令和5年7月4日に「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書」(乙第8号証。以下「令和5年報告書」という。)が取りまとめられた。この令和5年報告書の内容を踏まえ、厚生労働省労働基準局長は、令和5年9月1日付け基発0901第2号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」を発出し(甲第67号証)、認定基準を改正した(改正後の認定基準を「令和5年認定基準」という。)。 (2) 令和5年報告書(乙第8号証)の骨子 令和5年報告書は、近年の社会情勢の変化等を踏まえ、認定基準全般、すなわち精神障害の成因、精神障害の業務上外の判断枠組み、出来事ごとの心理的負荷の強度の見直し、心理的負荷の評価対象等について検討を行ったものであり、具体的には、精神障害の成因、認定要件、対象疾病、業務による心理的負荷の評価(具体的出来事の追加・修正・統合、出来事ごとの心理的負荷の強度、出来事が複数ある場合の評価、労働時間の評価、評価期間等)、業務以外の心理的負荷及び個体側要因の評価、発病の有無、発病の時期、悪化、自殺の取扱い、療養及び治ゆ、認定基準の運用等の各検討事項について記載している。 これら令和5年報告書の記載事項は、いずれも改正された令和5年認定基準の内容として採用されている。 (3) 令和5年認定基準(甲第67号証)の要旨 ア 対象疾病(甲第67号証1ページ) 対象疾病については、令和5年報告書において、現時点では平成23年認定基準の内容を維持することが妥当と判断されており、実質的な変更はない。 イ 認定要件及び認定要件に関する基本的な考え方(甲第67号証1及び2
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ページ) 認定要件及びこれに関する基本的な考え方については、令和5年報告書において、平成23年認定基準の内容が現時点でも妥当と判断されており、実質的な変更はないが、評価に当たっての考慮的要素等がより明確化された。 ウ 認定要件の具体的判断(乙第8号証2ないし8ページ) (ア) 発病等の判断 a 発病の有無等 発病の有無等の判断については実質的な変更はない。 なお、請求に係る診療の以前から精神障害による通院がなされている事案については、請求に係る精神障害が、新たに別の精神障害を併発したのか、もとの精神障害の症状の現れにすぎない(その精神障害の動揺の範囲内であって新たな精神障害の発病・悪化を来したものでない)のか、もとの精神障害の悪化の場合、もとの精神障害の症状安定後の新たな発病なのかが問題になるが、これらの鑑別について個別事案ごとに医学専門家による判断が必要であることから、精神障害による通院がなされている事案であっても、症状の経過等について、主治医の意見書や診療録等の関係資料を収集し、また、心理的負荷となる出来事等についても調査を行った上で、新たな発病の有無等について医学的な判断を求める必要がある。 b 発病時期 発病時期については、精神障害の治療歴のない自殺事案に係る考え方が明示されたほか、平成23年認定基準において、出来事の評価の留意事項とされていたもののうち、発病時期に関連する事項が当該項目において示された。 (イ) 業務による心理的負荷の強度の判断
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a 業務による強い心理的負荷の有無の判断 業務による強い心理的負荷の有無の判断に係る考え方については、実質的な変更はない。 b 業務による心理的負荷評価表 令和5年認定基準別表1「業務による心理的負荷評価表」(以下「令和5年認定基準別表1」という。)については、各具体的出来事への当てはめや心理的負荷の強度の評価が適切かつ効率的に行えるようにするとの観点から、具体的出来事の統合、追加、表記の修正、平均的な心理的負荷の強度の修正が行われ、併せて、総合評価の視点及び強度ごとの具体例の拡充等が行われた。 c 複数の出来事の評価 複数の出来事の評価の枠組みについては、実質的な変更はない。 d 評価期間の留意事項 評価期間については、発病前おおむね6か月であることに変更はないが、これに係る留意事項について、出来事の起点が発病の6か月より前であっても、その出来事(出来事後の状況)が継続している場合にあっては、発病前おおむね6か月の間における状況や対応について評価の対象とすることが明確化された。 (ウ) 業務以外の心理的負荷及び個体側要因による発病でないことの判断 業務以外の心理的負荷及び個体側要因の考え方並びに業務以外の心理的負荷の評価について、実質的な変更はない。 個体側要因について、個体側要因により発病したことが明らかな場合を一律に例示することは困難であることから、当該例示は削除され、併せて、調査の効率化等の観点から、調査対象となる事項等が明示された。 エ 精神障害の悪化と症状安定後の新たな発病(甲第67号証8及び9ページ)
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(ア) 精神障害の悪化とその業務起因性 平成23年認定基準の内容を変更し、特別な出来事に該当する出来事がなくとも、悪化の前に業務による強い心理的負荷が認められる事案について、当該業務による強い心理的負荷、本人の個体側要因(悪化前の精神障害の状況)と業務以外の心理的負荷、悪化の態様やこれに至る経緯(悪化後の症状やその程度、出来事と悪化との近接性、発病から悪化までの期間など)等を十分に検討した上で、業務による強い心理的負荷によって精神障害が自然経過を超えて著しく悪化したものと精神医学的に判断されるときには、悪化した部分について業務起因性を認めることが示された。その際、業務起因性が認められない精神障害について、その悪化の前に強い心理的負荷となる業務による出来事が認められても、直ちにそれが当該悪化の原因であると判断することはできないとする考え方は平成23年認定基準と同様である。 (イ) 症状安定後の新たな発病 通院・服薬を継続している者であっても、精神障害の発病後の悪化としてではなく、症状が改善し安定した状態が一定期間継続した後の新たな発病として判断すべきものがあることが明示された。この症状安定後の新たな発病の考え方は、平成23年報告書において示されていたものと同旨である。 オ 専門家意見と認定要件の判断(甲第67号証9ページ) より効率的な審査を行う観点から、平成23年認定基準の内容を変更し、専門部会意見を求める事案を一律に定めず、個別に高度な医学的検討が必要と判断した事案とされた。また、専門医意見を求める事案について、具体的事案が限定的に示された。 カ 療養及び治ゆ(甲第67号証9及び10ページ) 療養及び治ゆの考え方については、実質的な変更はないが、治ゆ(症状
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固定)の状態にある場合等がより明確化された。 キ その他及び複数業務要因災害(甲第67号証10ないし12ページ) いずれも実質的な変更はない。 7 小括 以上のとおり、精神障害の業務起因性については、①平均的な労働者、すなわち、日常業務を支障なく遂行できる労働者にとって、当該業務による心理的負荷が客観的に精神障害を発病させるに足りる程度の負荷であると認められること(危険性の要件)、及び、②当該業務による負荷がその他の業務外の要因に比して相対的に有力な原因となって当該精神障害を発病させたと認められること(現実化の要件)、の2つが必要である(第3の3)。 そして、上記1ないし6で述べたとおり、業務による心理的負荷を原因とする精神障害については認定基準に基づいて労災認定が行われているところ、認定基準は、専門的知見に基づく認定基準専門検討会の報告書を踏まえて策定されたものであり、その策定経緯や内容に照らし、合理性を有することは明らかであるから、前記要件該当性の判断は、認定基準に依拠するのが適切である。 そこで、以下、上記で述べた精神障害事案に対する労災認定の基本的な考え方に基づき、原告の精神障害の発病と業務との間に相当因果関係がなく、よって、本件処分が適法であることについて主張する。 第5 業務起因性の判断の前提となる事実関係等 1 本件病院の概要 本件病院は、社会医療法人名古屋記念財団を運営母体とし、昭和60年4月に開設された。病院の規模は、地上9階、地下1階、許可病床は416床で、診療科は、血液・化学療法内科を始め、21の診療科を標榜し(乙第1号証684ページ)、技術・事務部門は、薬剤部を始め10の部科室を有しており(同362ページ、684及び685ページ)、主な設備は、マルチスライスCT
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を始め、16以上の設備を有している(同685ページ)。 平成27年度の放射線部の労働者数は、男性の正職員9人、パート職員0人、女性の正職員4人、パート職員6人の合計19人であった(乙第1号証363及び685ページ)。 2 原告の経歴、業務内容等 原告は、前記第2の2(1)のとおり、平成24年4月1日に病院に入職し、放射線部に配属されてCT撮影等の業務に従事していた(乙第1号証300、383及び678ページ)。 3 原告の労働条件 令和3年3月25日付け「精神障害の業務起因性判断のための調査復命書」(乙第1号証179ページ)、勤務条件通知書(同69ページ)及び2017年4月1日改定「名古屋記念病院就業規則」(同364ないし370ページ)における原告の労働条件は、以下のとおりであった。 (1) 所定労働時間 所定始業時刻は午前8時30分、所定終業時刻は午後5時30分であり、1日の所定労働時間は8時間00分。 (2) 休憩時間 1日の所定労働時間に対し、60分または45分。 (3) 所定休日 年間所定休日126日で、週休2日、祝日、年末年始、創立記念休、フレキシブル休、その他、有給休暇、慶弔休暇、育児休業など。 (4) 時間外及び休日勤務 病院は、業務の都合により必要と認める場合、休日及び時間外勤務をさせることがある。休日勤務を命じられた職員は、正当な理由がないのにこれを拒むことはできず、休日勤務をした職員には、振替休日を与えることがある。 4 労働時間
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(1) 労働時間の管理方法 原告は、「出勤時、着替えを済ませて部署に入る直前にICカードで始業の記録をする。その後はすぐに資料の点検などの業務に取り掛かる。退勤時は、仕事を終えて部署を離れるときにICカードで退勤の記録をする。その後、着替えをして帰宅する。」(乙第1号証348(項目21)及び711ページ)と供述している。 病院関係者は、「病院での労働密度は日によって、時間によってむらがあります。名古屋記念病院の場合は、近くにある八事日赤が満床の場合に忙しくなる傾向があります。日勤の時、原告X(引用者注:原告)は午前8時頃に部署に来ます。部署の入り口前にタイムレコーダーが置いてあります。出勤後は書類でその日の患者さんのチェック等をします。午前8時10分頃から朝礼があります。朝礼は15分から20分程度です。朝礼が終わり次第、撮影が始まります。」(乙第1号証358(項目9)ページ)と供述している。 (2) 原告の休憩時間 病院関係者は、「日勤の休憩は45分間、当直の休憩は60分間でした。原告X(引用者注:原告(以下同じ。))は休憩をきちんとされていたと思います。よほどのことがない限り、きちんと休憩していたと思います。原告Xは休憩室で休憩していました。休憩室で寝ていました。休憩室で休憩していれば、電話対応をすることもありません。原告Xには電話番をさせていませんでした。」(乙第1号証358及び359(項目10)ページ)と供述している。 (3) 待機業務 原告は、「待機の時はいつ呼び出されるかわからないので、あまり外出もできない。呼び出されたら30分以内に病院へ行ける所にいなくてはならない。呼び出されても、その業務が終われば帰っていい。CTやMRIは1時間程度、心臓カテーテルは3時間程度かかる。待機で呼び出されたときはI
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Cカードで出退勤の記録はしない。実労働時間は『超過勤務及び休日勤務表』に記録する。」(乙第1号証348(項目22)及び711ページ)と供述している。 病院関係者は、「部署内の取り決めで、待機の時に午前0時を過ぎて呼び出された場合は、翌日の午前中は半日休むことになっています。」(乙第1号証359(項目13)ページ)と供述している。 (4) 当直 原告は、「宿直、日直勤務中に労働をした場合は、『超過勤務及び休日実勤務表』に記録する。検査が入らなければ、休憩していてもよく、0時になればソファーベッドに布団を敷いて横になる。検査が入ると起きて対応する。まとまった睡眠はあまり取れない。」(乙第1号証348(項目23)及び711ページ)と供述している。 病院関係者は、「当直中の業務の密度も日によってばらばらです。朝まで検査が入らないこともありますが、1時間置きに検査が入ることもあります。撮影の合間は自由に過ごすことができます。原告X(引用者注:原告)はテレビを見たり、本を読んだりして過ごしていたと思います。布団を敷いて横になることもできます。当直中に検査が入った場合、実労働の時間を『超過勤務及び休日勤務表』で申請します。通常、数件の検査をまとめて書きます(乙第1号証359(項目11)ページ)」と供述している。 (5) 日曜日の当直 病院関係者は、「日曜日の当直は午前8時30分始業、翌日月曜日の午前8時30分が終業です。午後5時30分以降に検査を行った場合は、実労働時間を『超過勤務及び休日勤務表』で申請します」(乙第1号証359(項目12)ページ)と供述している。 (6) 朝準備 「朝準備」から始まる書面(乙第1号証331ページ)によれば、朝準備
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の手順は以下のとおりとのことである。 毎朝、部会(8:10)が始まる前に以下の項目を行う。 ア 一般撮影(6番、8番) R、Lマークのテープを貼りかえる。 タオル・検査着を交換する。 (6番:ピンクタオル×2、白タオル×2、検査着×2) (8番:ピンクタオル×1、白タオル×2、検査着×3) 撮影室内のリス、補助具、ガーグルベースなど元の位置に整理整頓する。 イ ポータブル ポータブル装置の清掃、始業点検を行い、受付前の廊下へ出す。 ウ 部会中の業務 一人が受付の業務を行い、もう一人が8番撮影室で撮影を行う。 521と依頼の電話を転送したピッチは、受付担当が持つ。 原告が受付または撮影担当のとき、8時25分には原告はCTの業務を始めるため、撮影を中断し、8:30まで受付の業務を行い、その後、撮影業務を行う。 (7) 時間外労働時間の管理方法 「(11) 超過勤務命令簿と題する書面」(乙第1号証436ページ)によれば、時間外労働時間の管理方法は、以下のとおりとのことである。 すなわち、超過勤務をした職員は所属上長と一緒に、勤務内容を放射線部門情報システム(撮影・検査した内容を記録・管理しているシステム)を用いて確認し、超過勤務をした職員から説明を聞いた所属上長は内容を精査し超過勤務時間について承認をしている。 承認された超過勤務時間は、職員個人がexcel形式の「超過勤務及び休日勤務表」に入力して管理をしている。超過勤務時間は2016年9月から勤
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怠管理システムにも入力し、所属上長は勤怠管理システム上でも承認を行う。 上記の管理方法を取っているので、原告が所属する部署の共有パソコンの個人ごとの「超過勤務及び休日勤務表」が保存されている。しかしながら、原告の「超過勤務及び休日勤務表」のみ保存しているフォルダになく、調査した結果、隠しファイルとして、他職員と同じフォルダに保管されているのが確認できた。 恐らく、原告が敢えて「隠しファイル」として見えないようにしていると推測される。 「超過勤務及び休日勤務表」自体もexcelのパスワードがかけられており、病院側で開くこともできないため資料の提出が不可能である。 (8) 発病前おおむね6か月間の時間外労働時間 ア 労働時間の評価 (ア) 具体的な労働時間推計方法 出勤していないとされる日に短時間だが原告がCTを撮影している日や始業時刻及び終業時刻の一部に始業時刻の前、ないし、終業時刻を過ぎてCTを撮影した記録(甲第10ないし16号証等。以下「CT撮影記録」という。)があること、昼休みの時間帯に相当程度のCT撮影を行っていること、宿直及び日直の時間帯に、CT撮影記録があり、超過勤務及び休日勤務表(乙第1号証266ないし279ページ)には原告が単純X線撮影やMRIの撮影を行っていた記録があるため、CTの撮影に要した時間は、CT撮影の実態を考慮し、原則として、CT撮影記録の「実施日時」欄に記載された原告のCT撮影開始時刻から10分と推定し、原告がCTの撮影を「実施日時」に開始してから、10分未満で他の者が撮影を開始している場合においては、他の者のCTの「実施日時」の直前まで原告が撮影に要していたと推定し、同記録に加え、超過勤務及び休日勤務表(乙第1号証266ないし279ページ)を用い
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て原告の労働時間を推定した。 (イ) 始業時刻 労働時間の集計上CT撮影記録に記載された原告のCT撮影の「実施日時」が所定の始業時刻より早い日は、その「実施日時」欄に記載された撮影開始時刻を始業時刻とした。 (ウ) 終業時刻 CT撮影記録に記載された原告のCTの最終「実施日時」の10分後の時刻が、労働時間集計表に記載された終業時刻(乙1号証727ないし733ページ)より遅い日は、その時刻とした。 (エ) 昼休み時間帯の労働 CT撮影記録の「実施日時」欄に記載された原告のCT撮影開始時刻から、原告は昼休みの時間帯に相当量のCT撮影を行っており、昼休みの一部については労働していたと認められる。よって、CT撮影記録より実休憩時間を推定し、実際の原告の労働時間は、日によって変動しているため、午前11時から午後2時ぐらいまでの間にCT撮影を行っていない時間がまとまってあるときが実休憩時間帯であると推定し、CT撮影がない時間が45分を超えるときは、45分を実休憩時間とした。 この場合、CT撮影記録の「実施日時」欄に記載された原告のCT撮影開始時刻の10分後に撮影が終わったと推定し、その間の時間は労働時間と推定し、その撮影終了時刻と推定される時刻から次の撮影開始時刻までの間に10分以上の時間があれば、その時間は休憩時間と推定した。なお、ある撮影の撮影終了時刻と推定される時刻より前に次の撮影が開始されている場合は連続して労働していたものと推定し、また、ある撮影の撮影終了時刻と推定される時刻より前の時刻に別の者が撮影を開始していた場合は、その別の者による撮影開始時刻を原告の撮影終了時刻と推定した。
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(オ) 平成27年2月9日と同年7月13日の処理 労働時間集計表(乙第1号証727ないし733ページ)によると、平成27年2月9日及び同年7月13日は出勤していないことになっているものの、CT撮影記録では、これらの日に、それぞれCTを1度撮影した記録が残っているため、CT撮影記録の「実施日時」欄に記載された原告のCT撮影開始時刻の10分後を終業時刻とし、前日からの宿直の最終作業として扱う。 (カ) 待機 待機業務に関しては、呼び出されたら病院へ赴き実作業に従事することとなるが、病院内において待機する必要がなく、自由のある場所での待機であることから、待機時間中は労働時間としない。 (キ) 宿直及び日直 病院は、平成5年11月25日付で監督署長から断続的な宿直又は日直勤務許可を受けているため、勤務の態様は、常態として、ほとんど労働をする必要のない勤務のみを認めるものであり、実労働時間を労働時間とする(乙1・375ページ)。 この労働時間の算定は、原則として、超過勤務及び休日勤務表(乙第1号証266ないし279ページ)の「普通時間外」及び「深夜時間外」欄に記載された労働時間を全て加えたものを、その日における宿直及び日直の時間帯における労働時間数とし、CT撮影記録において、この時間帯の枠外の時間帯に撮影が開始された撮影がある場合は、このCT撮影の時間を加える。 このCT撮影については、昼休み時間帯の労働と同様に、CT撮影記録の「実施日時」欄に記載された原告のCT撮影開始時刻の10分後に撮影が終わったと推定し、その間の時間については労働時間と推定しつつ、その後の時間については、その撮影終了時刻と推定される時刻から
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次の撮影開始時刻までの間に20分以上の時間があれば、その時間は休憩時間と推定し、そうでない場合は、一連の労働時間とした。 なお、それぞれの撮影について、ある撮影の撮影終了時刻と推定される時刻から次の撮影の撮影開始時刻までの間に20分以上の時間があるときは、それぞれの撮影が10分の労働であったと推定して単純にその時間数を加算した。 イ 時間外労働時間数 以上のとおり集計した原告の時間外労働時間は、以下のとおりである。 なお、精神障害の発症時期が「平成27年7月中旬」であることを踏まえた上で、同月中旬(11日から20日まで)の各日を起算日として時間外労働時間を算出し、発症前の各月において時間外労働時間数が最も最大であった月が算出された「平成27年7月13日」を起算日として採用する。 発病前期間 1か月目 2か月目 3か月目 4か月目 5か月目 6か月目 時間外労働 40時間 47時間 41時間 39時間 67時間 43時間 時間数 39分 12分 52分 20分 40分 57分 5 人事評価 (1) 平成26年冬期賞与考課表(乙第1号証394ページ) 原告は「考課期間中の成果と反省」として、「今期もCT担当者として日々の業務全般を任せていただきました。業務の効率化に伴い、画像処理にかかる超過勤務を削減でき、また、CTCや依頼心臓CTの枠調整を行うことで前年度比検査件数の増加等、経営を意識した業務を行うことができました。これは毎日の部会でモダリティ別報告を行うようになったことで、常に実績を意識できたためと考えています。今期の反省点は、依頼のCDの焼き間違いをしたことです。依頼先との信頼関係を壊しかねないミスであり、患者の取り違えや誤診に発展する恐れのあった事例でした。」と記載している。
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総評として、A技師長は、「CT専従として撮影件数の増加や効率的な 業務運用に努めた事は、一定の成果と考えています。が、今後はCT専門技 師の資格取得に向け研究成果の報告を期待しています。また注意不足による インシデントがありましたが、それを教訓にして医療安全への対応力の向上 に努めてほしいと思います。」と記載している。 (2) 平成27年夏期賞与考課表(乙第1号証396ページ) 原告は「考課期間中の成果と反省」として、「今期もCT専従として業務 全般を任せていただきました。考課期間前半はモチベーションが維持できず、 積極性に欠ける面がありました。さらにクレームやインシデント、入院もあ り多くの人に支えられているという事が身に染みて理解できました。加えて、 患者の立場になって知識としてではない不安や悩み、感情を知ることができ ました。この点を踏まえて、考課期間後半は意識改革と人間力の修得に向け て自己啓発本を読む、資格取得に向けて座学の時間を増やすといったことを 行いました。全体を通して業績は増えたもののミスが多かったと言える期間 になりました。1つ1つのミスに対して事実を真摯に受け止め、反省した上 で対策を講じて次に繋げていきたいと考えております。」と記載している。 総評として、A技師長は、「CT検査において業務手順を見直し、件数 増加に努めたことは、考課期間中の成果と考えています。学会にも積極的に 参加して知識・技術の向上に取り組む姿勢も評価できます。今後はチーム医 療の一員としての自覚を強く持ち、医師、看護師からも信頼される人材に成 長してほしいと思います。」と記載している。 6 本件疾病について (1) 受診医療機関の各医師の意見 ア 〇〇クリニックZ2医師の意見書 〇〇クリニックZ2医師作成の令和2年11月21日付け 意見書(乙第1号証615ないし617ページ)の要旨は、以下のとおりで
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ある。 (ア) 初診日 平成28年4月1日 (イ) 受診の端緒 岡山県での大学生時代に人間関係に悩み、不安、抑うつ気分などを認 め、校内カウンセリングやメンタルクリニック受診開始。同地の大学院 卒業後、名古屋で就職したが、△△内科で岡山在住当時の向精神薬処方 を受けていた。同院閉院に伴い、平成28年4月1日より当院通院開始。 (ウ) 初診時における状況、自訴及び臨床所見 不眠や不安感が主訴であり、近藤内科での処方継続を希望。当初は、 神経症圏を念頭にしていた。しかし、第3回目の平成28年6月7日の 受診時に、1年前か数か月前から、思考途絶、幻聴、空笑などの症状が あるとの自訴があった。 当初発病原因については、特に申立てはなかった。 最近は職場のストレスによる影響もあるのではないかと訴えることが ある。 (エ) 確定診断名及び診断根拠 a 確定診断名 統合失調症 b 診断根拠 慢性的な意欲減退、思考力低下、被影響的な内容の幻聴や体験など が1か月以上にわたり持続していると判断したため。 (オ) 治療内容・投薬状況及び症状の経過 薬物療法、支持的精神療法を続けている。 抗精神病薬(エビリファイ)を開始したところ、幻聴や感情の不安定 さなどが軽減。
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令和元年5月にレキサルティへ変更後も病状に目立った変化はない が、徐々に仕事による疲労感、倦怠感、思考力低下の訴えが目立つ印象 はある。 (カ) 医学的に考え得る当該症状の発病時期、発病原因、経過等 統合失調症と診断可能な病状が出現した時期としては、平成27年頃 と考える。 大学生時代の前駆的状態であったものが、就職以降、本人の素因的 なものや職場ストレスが複合的に絡み合い発病につながったと考えら れる。統合失調症の発病原因を一律に区分することは困難である。 (2) 愛知労働局地方労災医員の意見書 愛知労働局地方労災医員Z医師の令和3年3月24日付け意見書(乙第 1号証654ないし659ページ)には、前記(1)の各意見の内容に加え、要 旨、以下のとおり記載されている。 病院関係者は、原告は入職した当初から人よりもミスが多く、それに対し て上司は指導を重ねてきたが減ることはなかったとしており、先輩は、「上 司は乱暴な言葉を使う人ではない。『どうやって請求人(引用者注:原告) を指導したらいいのか。』と悩んでおられた」と供述し、上司は「患者を取 り違えたり、造影剤を使わない検査なのに使ってしまったり、普通ではあり 得ないミスをした。また、ミスを隠そうとする。目の前で嘘つかれたことが あり、怒ったことが一度あった。ミスを指導しても改善せず、繰り返し、そ れを隠す。」と供述している。なお、別人の検査画像を保存したCDを提供 した件については、上司が先方の医療機関へ出向いて謝罪し、CDを差し替 えるなどの事後対応となり、原告は先方の医療機関へ謝罪の電話を入れた が他の対応はしておらず、これについてペナルティーは受けていない。 上司の「馬鹿か、お前は。」との発言については客観的な証言は得られて いないが、医療現場で患者を取り違えたり、検査を誤るといったミスの重大
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性や頻度、経過を考えると、原告が受けた注意は業務指導の範囲を逸脱して いるとは認められない。 また、原告は、上司から医学物理士の資格を取得することを求められ、平 成27年4月頃には資格取得するまでの具体的な計画を提示するように言わ れたとしているが、上司は医学物理士の資格者がいれば、診療点数に加算す ることができ、病院にとってメリットがあり、また、資格があればどこでも 働けるため、原告にとって、とても大きなメリットとなるため資格取得を勧 めたものであり、これは「ノルマ」ではなく、業務指導の一環とみるのが妥 当である。 原告は、CTC(大腸コロノグラフィー)の検査の仕方や所見の見方につ いての課題が出されたこと、患者の被ばく線量を検証する業務の指示がなさ れたと申し立てているが、原告がCTの担当者として正確な読影の技術や知 識を身に着けるために、上司が問題集を提供して勧めたもので、同種の労働 者であれば誰でもやれるレベルの問題であり、被ばく量の検証についてはデ ータを集めて集計するだけの作業であるため、業務範囲の指導を逸脱するも のではない。 原告は平成27年1月5日から同月17日まで13日間連続して勤務した ことが認められたが、これは、シフト上、上記期間中の土曜日に半日勤務、 日曜日に当直勤務が組まれたために連続勤務となったもので、平日だけでは こなせない業務や休日に対応しなければならない業務が生じたために連続勤 務になったものではなく、同月11日午前8時30分から翌12日午前8時 30分までの間、日当直業務に従事しているが、日中は休診であるため急患 等に対応するのみであり、関係者によれば、日当直の実労働時間は7時間程 度とのことであるから、特段労働密度が高いとは認められない。 これらの出来事は、本件認定基準別表1の特別な出来事には該当せず、出 来事の類型「対人関係」具体的出来事「上司とのトラブルがあった」に当て
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はめて検討するのが妥当であり、当該出来事の平均的な心理的負荷の強度は 「Ⅱ」であるが、前記のとおり、原告のミスに対する叱責であり、また、原 告のスキルアップ等に対する指導と認められるものであり、いずれも業務指 導の範囲を逸脱するものではないことから、心理的負荷の強度は「弱」と判 断し、この出来事前後に恒常的長時間労働は認められないことから、心理的 負荷の総合評価は「弱」と判断する。 また、13日間の連続勤務が認められることから、出来事の類型「仕事の 量・質」具体的出来事「2週間以上にわたって連続勤務を行った」に当ては めて検討するのが妥当であり、当該出来事の平均的な心理的負荷の強度は 「Ⅱ」であるが、前記のとおり、シフト上連続勤務になったものであり、期 間中に半日勤務の日は2日あり、評価期間の間に当てはまるのは4日間のみであ ることなどを総合的に判断し、心理的負荷の強度は「弱」と判断する。 よって、評価期間内に、関連しない複数の出来事が認められ、出来事の評 価がいずれも「弱」であり、心理的負荷の全体評価は「弱」と判断する。 なお、原告が申し立てる「仕事内容、仕事量の(大きな)変化を生じさせ る出来事があった」こと、「複数名で担当していた業務を一人で担当するよ うになった」こと、「業務に関連し、違法行為を強要された」ことについて は、それぞれ、勤務日数が違うこと、業務を手伝ってもらっていたものであ ること、原告本人のことではないことから、業務による出来事として評価し ない。 第6 本件処分が適法であること 1 はじめに 本件において、原告がICD-10診断ガイドラインに照らして判断したと ころの「F20 統合失調症」を発病していた事実については、当事者間で争 いはない。
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したがって、本件の争点は、原告の本件疾病の発病につき業務起因性が認め られるか否かであるが、これについては、本件認定基準(前記第4)に基づいて 判断されるべきものである。この点、本件認定基準によれば、精神障害の発病 について業務起因性が認められるためには、①対象疾病を発病していること、 ②対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認め られること、③業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病し たとは認められないことの各要件をいずれも充足することが必要であるとこ ろ、上記①につき争いはないから、上記②及び③につき検討を要する。 そして、本件の事実関係によれば、原告が本件疾病を発病した時期は平成27 年7月中旬頃であって、本件認定基準により、本件発病前おおむね6か月の間に おいて、原告が業務上の心理的負荷があったとして主張する出来事につき、い ずれも当該精神障害を発病させる程度の強い心理的負荷があったとは認められ ない(後記2)。 したがって、上記③につき検討するまでもなく、原告の本件疾病の発病につ いて業務起因性は認められず、本件処分は適法である。以下、詳述する。 2 原告の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷があったと は認められないこと (1) はじめに 前記第4の4(2)エ(イ)で述べたとおり、本件認定基準によると、精神障 害の発病につき業務起因性が認められるためには、発病前おおむね6か月の 間に業務による強い心理的負荷が認められることが必要であり、その検討の ためには、当該6か月間に精神障害の発病に関与したと考えられるどのよう な出来事があったかを把握する必要がある。 本件における発病の時期は、前記1で述べたとおり、平成27年7月中旬 頃であるから、これを起算点として、その前おおむね6か月間における業務 による強い心理的負荷となる出来事の有無を検討する。
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(2) 「特別な出来事」は存在しないこと 本件認定基準別表1は「特別な出来事」の類型として、①「心理的負荷が 極度のもの」、②「極度の長時間労働」を定めている(乙第7号証・本件認定 基準別表1・1ページ)。 上記①の「心理的負荷が極度のもの」とは、「生死にかかわる、極度の苦 痛を伴う、又は永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをし たことなど」を指すが、原告はこれらに該当し得る具体的な事実を主張して おらず、これを認めるに足りる証拠はない。 また、上記②の「極度の長時間労働」とは、「発病直前の1か月におおむ ね160時間を超えるような、又はこれに満たない期間にこれと同程度の(例 えば3週間におおむね120時間以上の)時間外労働を行ったこと」を指す が、原告の発病前1か月における時間外労働時間は、前記第5の4(8)イの とおり40時間39分であり、「極度の長時間労働」には該当しない。 したがって、原告については、本件認定基準別表1の「特別な出来事」に 該当する出来事は認められない。 (3) 「特別な出来事」以外の出来事とその評価 前記(2)のとおり、原告については「特別な出来事」に該当する出来事は 存在しないが、そのような場合は、発病前おおむね6か月の間に認められた 業務による出来事が、本件認定基準別表1の「具体的出来事」のどれに該当 するか判断し、その心理的負荷の総合評価を行うこととなる(乙第7号証4 ページ)。 この点、原告は、業務による心理的負荷となる出来事について、令和5年 認定基準に基づいて主張し、その出来事を総合評価すれば、原告の心理的負 荷の強度は「強」であったと主張する(訴状5ないし18ページ)ところ、 原告が主張する出来事を本件認定基準に当てはめて整理すると、①上司等か ら、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けたこと(本件認
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定基準別表1の項目(以下、単に「項目」という。)29)、②達成困難なノ ルマが課せられた・達成できなかったこと(項目8、9)、③1か月に80 時間以上の時間外労働を行ったこと(項目16)、④2週間以上にわたって 連続勤務を行ったこと(項目17)、⑤仕事内容・仕事量の(大きな)変化 を生じさせる出来事があったこと(項目15)、⑥複数名で担当していた業 務を一人で担当するようになったこと(項目23)、⑦顧客や取引先から、 無理な注文を受けた・クレームを受けたこと(項目11、12)、⑧感染症 等の病気や事故の危険性が高い業務に従事したこと(本件認定基準に該当な し、令和5年認定基準別表1の項目14)、⑨業務に関連し、違法行為を強 要されたこと(項目7)、⑩業務に関連し、重大な人身事故、重大事故を起 こしたこと(項目3)となる。 上記各具体的出来事の評価について、以下詳述する(前記第4の4(2)エ (イ)c参照)。 ア ①「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受 けた」(項目29)について (ア) 原告は、「上司等からパワーハラスメントを受けた。その内容は、原 告が、甲4号証に詳細に事実の経過を記載したとおりである。」、「病院 関係者A(引用者注:A技師長)及び病院関係者Jから精神的攻撃を 執拗に受けていた。」、「これらの精神的攻撃は、人格や人間性を否定す るような業務上明らかに必要性のない又は業務の目的を大きく逸脱した 精神的攻撃」であったなどと主張し、これによる心理的負荷は、心理的 負荷評価表に当てはめると「強」であると主張する(訴状5ないし6ペ ージ)。 (イ) しかしながら、A技師長らが原告に対し人格や人間性を否定するよ うな発言等をしていたことを裏付ける客観的な証拠は見当たらない。 かえって、病院関係者からは、A技師長は、乱暴な言葉を使う人で
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はなく、「怒る」というよりは、どうしてミスをしたのか、どうしたら 防げるのか、今後の対応について指導してくれる人である(乙第1号証 350及び351ページ)などと評されている。 この点、A技師長らの原告に対する叱責が一定程度あったことは否 定できないが、A技師長らがそのような対応をした背景には、原告に は業務遂行上の過誤が多かったことや、原告がそれらの過誤を隠すなど したことがあったものであり、そのような背景を考慮すれば、A技師長 らの原告に対する叱責は原告に対する精神的攻撃に当たるとはいえず、 業務指導の範囲内にとどまるものというべきであるから、A技師長らの 言動については、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハ ラスメントを受けた」(項目29)ものとしてではなく、「上司とのトラ ブルがあった」(項目31)ものとして、その心理的負荷を評価するの が相当である。そして、A技師長らの原告に対する言動は、原告に対 する業務指導の範囲内にとどまり、業務を巡る方針等において周囲から 客観的に認識されるような対立が生じていないことを踏まえると、その 心理的負荷の強度は「弱」と評価するのが相当である。 イ ②「達成困難なノルマが課せられた・達成できなかった」(項目8、9) について (ア) 原告は、「原告には相当量の撮影ノルマが課せられており、原告は、 そのことについて甲第8号証で詳細なデータを指摘して説明してい る。」、「甲第8号証にある通り、原告には『医学物理士の資格取得要請』 『CTC(コロノグラフィー)読影スキル習得課題』『CT被ばく線量 の確認作業と撮影条件の再検証作業』等、この過重な撮影ノルマに追加 して、多くの業務がノルマとして課されていた」、「原告は平成27年5 月にノルマ未達成であり(甲第8号証)、これにより、原告は業務改善資 料の作成を命じられ、提出している。」などと主張し、「この撮影ノルマ
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の心理的負荷は業務による心理的負荷評価表の『中』に当てはまる」と 主張する(訴状6、7ページ)。 (イ) しかしながら、「撮影ノルマ」の点については、CT撮影記録によれ ば、原告以外の他の技師が撮影し、原告によるCT撮影のない日や撮影 のない時間帯がそれなりにある日もあり、原告の主張を前提にしても、 目標を達成できた月の方が多いと認められることから(甲第8号証)、 CTの撮影について達成困難なノルマが課されたとはいえないというべ きである。 また、「医学物理士の資格取得要請」の点については、平成27年4月 14日の部会においてA技師長が「資格取得に挑戦する意思を持った 技師が出てくることが望まれる」と発言したことを確認でき(乙第1号 証117ページ)、原告においても、同月、平成27年度個人目標の長 期目標として医学物理士の資格取得を掲げて、具体的な計画を記載して いたことが確認できる(同240ページ)ものの、医学物理士の資格に ついて、その取得がノルマとされていたことをうかがわせる事情は見当 たらない。 さらに、「CTC(コロノグラフィー)読影スキル習得課題」の点に ついては、原告自身が、平成27年度個人目標の中で、「(4) 技術の習 得 CTCスキャンの読影スキルを身につける。資格試験の勉強時間確 保のため、実時間としては当直勤務中を中心に行う予定で、時間は掛 かると思われます。検査件数が少なくモチベーションの維持に課題があ ります。」と記載し、中長期的な目標として認識していたこと(乙第1 号証240ページ)、また、病院関係者も、CTCの読影は難しく、学 会では「50症例以上見ないと読影能力が上がらない。」と言われてお り、原告のスキルアップのために、学会の雑誌の症例集を提供し、「こ れをやってみるといいよ。」と言って渡しただけで、できないからといっ
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てペナルティーを与えるつもりはなかった旨供述していること(乙第1号証357ページ)などからすれば、ノルマとして課されていたものと捉えることはできないというべきである。 最後に、「CT被ばく線量の確認作業と撮影条件の再検証作業」の点については、病院関係者は、原告がデータ収集とそれを解析する作業が得意であったことからそのような作業を依頼した旨供述しているが(乙第1号証357ページ)、それが原告にとって達成困難なものであることをうかがわせる事情は見当たらない。 以上より、これらの出来事は、「達成困難なノルマが課せられた・対応した・達成できなかった」に該当せず、心理的負担があったとしても、その強度については、上記内容からすれば、「弱」とするのが相当である。 ウ ③「1か月に80時間以上の時間外労働を行った」(項目16)について (ア) 原告は、「時間外労働の考え方」として、「当直時間」と「待機時間」について、いずれも労働時間に含めて計算すべきである、また、待機時間を時間外労働時間に含めない甲第22号証の集計方法においても1か月の時間外労働時間は80時間を超えているため、業務による心理的負荷評価表に当てはめると心理的負荷の強さは「中」となると主張する(訴状7及び8ページ)。 (イ) しかしながら、前記第5の4(8)ア(キ)で述べたとおり、病院は、断続的な宿直又は日直勤務の許可を受けているため、勤務の態様は、常態として、ほとんど労働をする必要のない勤務のみを認めるものであるから、実労働時間を労働時間とすべきであり、「当直時間」を全て労働時間に含めて計算すべきとの原告の主張は理由がない。また、待機時間についても、私的行動が一定程度制限されるとはいえ、緊急の事情がな
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い場合は労働することが想定されておらず、テレビ視聴、入浴など種々な私的行為を行うことができるのであるから、「待機時間」の全てを労働時間に含めるべきとする原告の主張は理由がない。 そして、原告が本件疾病を発病した時期は、前記1のとおり、平成27年7月中旬頃であり、原告の発病前のおおむね6か月の時間外労働時間は、前記第5の4(8)イのとおり、39時間20分から67時間40分までの範囲である。 したがって、1か月に80時間以上の時間外労働を行ったとはいえず、原告の主張は理由がない。 そして、時間外労働時間については、評価期間における各月の時間外労働時間数は80時間未満にとどまるため、その心理的負荷の強度は「弱」と評価するのが相当である。 エ ④「2週間以上にわたって連続勤務を行った」(項目17)について (ア) 原告は、①平成27年1月11日から12日まで間や②同年3月8日から同月20日までの間などにおいて連続勤務が成立しており、これによる心理的負荷は業務による心理的負荷評価表に当てはめると「中」または「強」であると主張する(訴状8及び9ページ)。 (イ) しかしながら、本件認定基準では、連続勤務は休日に対応しなければならない業務が発生することを想定しているが、当直勤務等はあらかじめ組まれてシフト化されたものであり、フレキシブル勤務変更表(乙第1号証280及び282ページ)のとおり、前記①については、平成27年1月10日及び同月11日の各4時間の勤務を同月20日に8時間として休日が振り替えられており、また、前記②についても、同年3月14日の4時間の勤務を同月26日に振り替えていて、シフト上、連続勤務になったとしても、その後の休日は確保されている。 そうすると、原告に生じた連続勤務は、平日の時間外労働だけではこ
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なせない業務量や休日に対応しなければならない業務が発生したことによるものではなく、あらかじめシフト上で予定されていた土曜日の半日勤務や日曜日の当直勤務に従事したことにより連続勤務となったものといえる。 したがって原告が2週間以上にわたって連続勤務を行ったとしても、シフト上であらかじめ予定されていた土曜日の半日勤務や日曜日の当直勤務に従事したことによるものであること、これらの勤務には宿直及び日直の日が含まれており、労働密度が低く、その後の休日も確保されていることから、この連続勤務による心理的負荷の強度は「弱」と評価するのが相当である。 オ ⑤「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」(項目15)について 前記第5の4(8)イのとおり、発病日の起点を平成27年7月13日とする発病前6か月間の時間外労働時間数の推移をみると、発病6か月前(平成27年2月13日~同年1月15日)の時間外労働時間数が43時間57分であったのに対し、発病5か月前(同年3月15日~2月14日)の時間外労働時間数は67時間40分となっており、時間外労働時間数が23時間43分増加し、かつ、1か月当たる45時間以上となっていたことが認められる。 そうすると、この時間外労働時間数の増加は「仕事内容・仕事の大きな変化を生じさせる出来事があった」ことに該当するものであり、その心理的負荷の強度は「中」と評価するのが相当である。 カ ⑥「複数名で担当していた業務を1人で担当するようになった」(項目23)について (ア) 原告は、「平成27年1月19日~同年3月31日までの間、病院関係者Bが休職したことによって、64列CTの検査を一人で行った。病
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院関係者Bは16列CTの担当であるが、(中略)原告と病院関係者Bは二人で64列CTを行っていた。この業務を、病院関係者Bが休職したことにより原告が1人で行うことになった。」などと主張し、この出来事は、「二人で担当していた業務を一人で担当するようになった」ことに該当し、その心理的負荷は「中」となる旨主張する(訴状10ページ)。 (イ) しかしながら、64列CTの業務は、そもそも原告の担当であり、病院関係者Bは手が空いた際に手伝っていたにすぎない上、原告が一人で対応できないものでもなかった(乙第1号証358ページ)から、原告が上記業務を一人で担当するようになったからといって、「複数名で担当していた業務を1人で担当するようになった」ことには該当しないというべきである。 また、仮に、「複数名で担当していた業務を1人で担当するようになった」ことに該当するとしても、64列CT業務は、原告が本来一人で担当することが予定されていたものであり、病院関係者Bの関与の程度もそれほど大きくなかったことから、その心理的負荷の強度は「弱」と評価するのが相当である。 キ ⑦「顧客や取引先から、無理な注文を受けた・クレームを受けた」(項目11、12)について (ア) 原告は、平成27年5月19日、同年5月22日及び同年1月16日に患者や依頼先からクレーム等を受けた旨主張し、「これらの出来事は旧認定基準の『顧客や取引先からクレームを受けた』に該当し、これが統合された項目である現認定基準の『顧客や取引先から対応が困難な注文や要求等を受けた』で評価されるべきであり、これによる精神的負荷は業務による心理的負荷評価表に当てはめると『中』である。」と主張する(訴状10及び11ページ)。
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(イ) しかしながら、原告が主張するクレーム等については、その具体的内容が明らかでなく、クレーム等があったことの客観的な裏付けもないことから、そのような出来事があったことを前提として、その心理的負荷を評価することは困難である。 また、仮にクレーム等があったとしても、その事後対応が困難であったことは何ら主張立証されていないことから、対応困難な注文や要求等があったとしてその心理的負荷の強度を「中」とすることはできず、その心理的負荷の強度は「弱」にとどまるというべきである。 なお、クレーム等が本人の過誤による場合は、具体的出来事としては、「会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをした」(項目4)、あるいは、「多額の損失を発生させるなど仕事上のミスをした」(令和5年認定基準別表1の項目4)として評価されているが(乙第7号証、甲第67号証)、原告の過誤によって病院に多大な損害が生じた等の事情は認められないから、心理的負荷があったとしても、その強度は「弱」にとどまるというべきである。 ク ⑧「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」(令和5年認定基準別表1の項目14)について (ア) 原告は、病院では、結核などの感染症への対応などが日常的にあり、また検査中に嘔吐される場合も珍しくなく、嘔吐物の処理は看護師と一緒に行っていた、また、病院では法令に違反し、CT室の鉛ガラスからX線が漏洩していた(以下「放射線漏洩」という。)などと主張し、これらの出来事は、「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事したとの項目の『中』の具体例の『感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事し、防護等対策も一定の負担を伴うものであったが、確立した対策を実施すること等により職員のリスクは低減されていた』に当てはまり、心理的負荷は『中』であると主張する(訴状11ページ)。
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(イ) しかしながら、原告の業務は、感染症の感染の危険性があることは否定できないものの、CT撮影等の業務の場合、感染症等の患者と接する機会や患者の嘔吐物等を処理する機会が必ずしも多いとはいえず、仮に感染症等の患者と接する機会があったとしても、その接触時間は少なかったと考えられるから、感染症等の感染の危険性が高いとまではいえない。また、X線の漏洩については、原告自身が被ばく量としては多くないと記述しているところである(甲第4号証23ページ)。 したがって、これらの出来事については、令和5年認定基準の心理的負荷評価表の具体例「重篤ではない感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」に当てはまるといえ、その心理的負荷の強度は「弱」にとどまるというべきである。 ケ ⑨「業務に関連し、違法行為を強要された」について (ア) 原告は、平成25年7月から平成26年3月までCT撮影者改ざんの指示をA技師長から受けた、原告は一度は反対したが、パワーハラスメントの恐怖心からA技師長の指示に従っていたなどと主張する。そして、この出来事自体は発病前6か月よりも前だが、原告は不正が発覚し刑事訴追を受けるのではないか常に不安を感じていたから、出来事による心理的負荷が長期間継続していた、当該出来事は、「強」の例にある「業務に関連し、重大な違法行為を命じられ、何度もそれに従った」に該当し、その心理的負荷は「強」であると主張する(訴状11及び12ページ)。 (イ) しかしながら、当該不正行為については、客観的な裏付けがない。また、仮に当該不正行為があったとしても、原告自身も認めるとおり、本件疾病発病の1年以上前の出来事である。そして、前記アで述べたとおり、A技師長によるパワーハラスメントは認められず、同人のパワーハラスメントの恐怖心から原告が同人の指示に従っていたということも認
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められない。 したがって、当該出来事が存在したことを前提として、心理的負荷の強度を評価することはできないというべきである。 コ ⑩「業務に関連し、重大な人身事故、重大事故を起こした」(項目3)について (ア) 原告は、平成27年2月10日の造影検査において血管外漏出事故を起こした、他にも複数回の造影剤アレルギー事案に遭遇したなどと主張し、これらを起こしたことによる心理的負荷は弱いものではなく、これは「業務に関連し重大な人身事故重大事故を起こした」の項目の「中」の具体例の「他人に負わせた怪我の程度は重度ではないが、事後対応に一定の労力を要した」に一致し、その心理的負荷は「中」であったと主張する(訴状12及び13ページ)。 (イ) しかしながら、当該出来事を裏付ける客観的な証拠はなく、当該出来事が存在したことを前提として、心理的負荷の強度を評価をすることはできないというべきである。 3 業務による心理的負荷の全体評価について 以上のとおり、原告に「特別な出来事」に該当する出来事は存在せず、また、原告が主張する業務による心理的負荷をもたらす出来事の強度は、「中」となる出来事が1つで、その他の出来事は「弱」かそもそも出来事として認定できないものであり、心理的負荷の全体評価は「中」とするのが相当であるから、原告の本件疾病の発病を業務上の事由によると認めることはできない。 第7 結語 以上のとおり、原告の本件疾病の発病は業務に起因するものとは認められず、本件処分は適法であったのであるから、本件請求は速やかに棄却されるべきである。 以上
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副本 令和6年(行ウ)第13号 療養補償給付不支給処分取消請求事件 原 告 原告X 被 告 国(処分行政庁 名古屋東労働基準監督署長) 被告証拠説明書(1) 令和6年5月2日 名古屋地方裁判所民事第1部合ホE係 御中 被告指定代理人 11名
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略語は準備書面の例による。 号証 標目(作成者) 作成年月日 立証趣旨 乙1 業務上外関係再審査請求事件資料 (労働保険審査会) 写し R5.4.18 本件再審査請求に係る審査資料。 乙2 精神障害等の労災認定に係る専門検討会報告書 (精神障害等の労災認定に係る専門検討会) 写し H11.7.29 精神障害等の労災認定における業務起因性の判断に係る専門家の見解。 乙3 心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について (労働省労働基準局長) 写し H11.9.14 精神障害等に係る労災認定の判断指針を明らかにした行政通達の存在及びその内容。 乙4 精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書 (精神障害の労災認定の基準に関する専門検討) 写し H23.11.8 精神障害の労災認定における業務起因性の判断に係る専門家の見解等。 乙5 心理的負荷による精神障害の認定基準について (厚生労働省労働基準局長) 写し H23.12.26 認定基準の運用方法等を示した行政通達の存在及びその内容。 乙6 精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書 (精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会) 写し R2.5 精神障害の労災認定における業務起因性の判断に係る専門家の見解。
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号証 標目(作成者) 作成年月日 立証趣旨 乙7 心理的負荷による精神障害の認定基準について (厚生労働省労働基準局長) 写し R2.8.21 改正された精神障害等に係る労災認定の認定基準を明らかにした行政通達の存在及びその内容。 乙8 精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書 (精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会) 写し R5.7 精神障害の労災認定における業務起因性の判断に係る専門家の見解。 乙9 裁決書 (労働保険審査会) 写し R6.4.5 原告の労働保険審査会に対して行った再審査請求が、令和6年4月5日付けで棄却されたこと。